それを聞いた後、参加者は実際に自分でチョコレートを味わって採点した。すると、最初のグループがつけた点数は、2番目のグループよりかなり低いものになった。また参加者に食べた感想を聞くと、低い点をつけた人は「まあまあ」や「ごく普通」といった中途半端な言葉を用いて味を表現した。
一方、2番目のグループの場合は、「ほんとうにおいしい」や「すごい」などの言葉を使うことがかなり多くなった。全員が同じ板チョコを試食したのに、実際に味わう前に知った数字によって、まったく異なる経験をすることになったわけだ。
あとから自分の経験の印象が変わる
では、それは逆でも言えることだろうか? すでに味わって自分なりの感じ方をしたのに、その後で他の人の数字の影響を受け、思いなおすことはあるのだろうか。
それもチョコレートを使って試してみた。100人に同じ新製品の板チョコを味わってもらい、その試食が終わった後で、半数には他の人たちの評価は平均で5より低かったと伝え、残りの半数には他の人たちの評価が平均で5より高かったと伝えたのだ。
結果は前の場合と同じだった――低い数字を見た人たちは自分でも低めの数字を選んで、中途半端な言葉を用いて味を表現し、高い数字を見た人たちは自分でも高めの数字を選んで、より熱のこもった言葉を使って表現した。
数字はあまりにも明確なために、私たちは何かを身をもって経験した後でさえ、その影響を受けて自分の経験の印象を見なおしてしまう。
(翻訳:西田美緒子)
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