「最高のホテル」という好印象を下げる意外な原因 ホテルや映画のレーティングの知られざる罠

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そんなふうに私たちの基準点は少しずつ移動していき、1年前にはたしか4だった楽しい経験も、今では3にしかならない。そして数字は正確だから、数字の3は明らかに数字の4よりも低く、楽しい経験も最後にはちっとも楽しく感じられなくなってしまうこともある

好奇心に導かれて自分自身の経験を楽しんできた人も、数字に出会うとプロのご意見番へと変身してしまう。正確な数字という形式で真実を手にして、いつでも、どんなものでも、比較できるようになったからだ。

そしてあらゆるものの採点を頼まれるたびに、数字が次から次へと別の経験に忍び込んでいって、プロのご意見番の勢力範囲も拡大していく。何しろ、ホテルや映画だけでなく、レストラン、人間ドック、講義からトイレまで、とにかくなんでも採点するのが今の風潮になっている。

さらに、そのようにして心に住み着いたプロのご意見番は自分自身の経験を支配するだけではすまない。それは他の人たちの経験まで掌握することになる

ホテル、映画、トイレをはじめ、私たちがあらゆるものを採点した結果は、いつのまにか中央値を表わす数字に組み込まれ、他の人たちの目にも入るようになるからだ――「このホテルは、他の宿泊客から3.7の評価をもらっている」。

他人の評価から影響を受ける

でも、その評価は自分自身で採点する場合とほんとうに同じなのだろうか。何と言ってもその数字は他人の経験に基づくもので、自分自身の経験ではないのだ。

残念ながら、答えはイエスだ。私たちは数百人の人たちに新製品の板チョコを試食してもらい、この点を調査したことがある。スウェーデンの大手チョコレートメーカーが新しい味の板チョコを発売しようとしていたので、参加者にはその製品をはじめて味わってもらうことができた。

まず参加者を半分に分け、実際にチョコレートを味わう前に、半数には他の人たちの評価の平均が10点のうちの5点に満たない低い値だと知らせ、残る半数には他の人たちの評価の平均値は5点よりずっと高いと知らせておいた。

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