米大統領選に翻弄される日鉄のUSスチール買収 株主総会で賛成を得たが買収は無事成立するか

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しかし、買収の先行きはまったく見通せない。

目下、最大の障害となっているのはUSWの反対だ。USWはアメリカの鉄鋼2位・クリーブランド・クリフスによるUSS買収を後押ししており、日鉄の買収に対して「失望した」「献身的な労働者の懸念を脇に押しやり、外資系企業に売却することを選んだ」などと非難している。

これに政治も呼応する。日鉄による買収計画が発表された後、共和党の大統領候補であるトランプ氏は「絶対に阻止する」と表明。バイデン大統領も「アメリカ国内で所有・運営されるアメリカの鉄鋼企業であり続けることが重要だ」との声明を発表していた。

問題をややこしくしているのが、今年がアメリカ大統領選挙の年で、かつUSS本社が「スイングステート」(選挙のたびに勝利政党が替わる「揺れる州」)として知られるペンシルベニア州にあることだ。

激戦が予想される大統領選挙をにらめば、強い集票力を持つUSWが反対している以上、政治的に買収支持の表明は難しい。バイデン政権は反対ではないとされるが、4月10日の日米首脳共同記者会見でもバイデン大統領は「アメリカの労働者に対する約束を守る」と述べるにとどめた。さらに、冒頭のようにUSWに寄り添う姿勢を改めて強調した。

日鉄のアメリカでの商売はわずか

買収成立には、反トラスト法(独占禁止法)や、アメリカの安全保障上の懸念を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の認可が必要になる。ただ、日鉄のアメリカでの商売はわずかで、同盟国・日本の企業でもある。本来なら独禁法もCFIUSも障害にはなりにくい。

だが、ともに政府の組織が判断する以上、政治の影響は避けられない。アメリカの一部政治家が日鉄の中国事業を問題視し、日鉄の中国拠点が新疆ウイグル自治区に存在するといった報道も出た。日鉄は即座に「そのような事実はいっさいない」と声明を出す羽目になった。

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