ある調査によると、何かを決めるときに、「いいアドバイスを与えられれば正しく判断できる」と予測した人は65%だった。一方、「悪いアドバイスを与えられても正しく判断できる」と考えた人は64%と、ほぼ同じであった。
消費者は損得計算をするのが実は苦手
プリンターのように形のある商品は、本当のコストを覆い隠すのに適している。銀行口座、クレジットカード、住宅ローン、市場で広く販売されている投資商品などもそうで、通常、隠れた料金やペナルティなどが含まれる。
だが、どの支出にも売り手が買い手に考慮してほしくない属性がある。「機会費用」だ。経済学は機会費用を「あるものを選択することで失うことになる、次善の選択をした場合に得られる利益」と定義している。お金以外にも限られた資源、特に時間が当てはまる。
たとえば、大学に4年間通うと決めた人は、その間は、給料を稼ぐなどの別のことをしない選択をしている。標準的経済学では、顧客は機会費用を十分に承知していると仮定する。同じ価格でも、商品Bではなく商品Aにお金を使うと決めたということは、その人がBよりもAが気に入っていることになる。
ある人が大学に行くと決めたのは、行かなかった場合に4年間で得られた給料や経験よりも教育を重視したか、あるいは長い目で見ればそれ以上の稼ぎが見込めると考えたからだ。標準的経済学では、人は相対コストや相対的な費用と利益を独自の価値観にもとづいて比較検討し、最大のリターンが得られる選択肢を選ぶとされる。
ところが、意思決定科学者のシェーン・フレデリックと同僚の研究によって、消費者は実際には機会費用を考慮しない場合が多いことが判明した。
ある実験では、大学生にスクラッチ式宝くじで1000ドルが当たり、新しいステレオセットを買うことを想定させた。被験者は、700ドルのセットか、アンプとCDチェンジャーの性能が上回るよく似た1000ドルのセットのどちらかを選べる。無作為に選んだ参加者の一部には、別の情報を伝えた。安いほうを買えばおつりの300ドルはもらえるという事実だ。