ヴェールに隠された属性のなかには「手数料」や「サービス料」といったわかりやすい追加料金もある。これらの属性が目に見える形で提示されていても、消費者は追加的な費用を支払う傾向がある。
総コストで見ると、安いどころか割高
ヴェールに隠された属性を明らかにして商品の真のコストを知るのが難しい場合がある。プリンターの場合、小売販売員が1枚当たりの価格や、プリンターの耐用年数中に購入者が費やす総額を把握していない可能性がある。銀行や投資信託の手数料も同様だ。政府は開示を義務づけているが、企業の窓口担当者は、顧客に料金体系を説明できるほど理解していないこともある。
だまされないようにするには、隠されたコストを明らかにすることが重要になる。必要な情報が入手できても、直感的に理解するのが難しいものもある。たとえば、マイホーム購入にかかる総コストだ。マイホームも、プリンターと同じく本体の価格で提示されるため、購入者はそれ以外のコスト(契約手数料や住宅ローン、税金、維持管理費、保険料など)を自分で見積もらなくてはいけない。
つまり、ヴェールに隠された属性がどこに潜んでいるのかをくまなく探す努力をしなければならない。とはいえ、存在しないふりをするよりはいい。あいにく、収入、学歴、金融リテラシー、数学能力が低い人々は、隠された属性に加えて、他の搾取的なマーケティング活動にもとりわけ弱い傾向がある。
幸いにも、彼らは「ブースト〔人々の意思決定能力を育んで態度を変化させるアプローチ〕」や「ナッジ〔望ましい行動を取れるよう環境条件を整えて人々を後押しするアプローチ〕」などを用いて人々の選択をよい方向に導こうとする善意の取り組みから大きな恩恵を受けることもできる。
たとえば、経済的にもっとも正しい選択肢を選ぶ確率を高めるために、その選択肢をデフォルトで選択させておくといった方法を用いることで、こうした人々が適切な意思決定をするのを後押しできる。しかし、多くの人はそうした手助けが必要だと思っていない。