そもそもわかりやすい宇宙活劇のSFではなく、タイトルからして物理学の「三体問題」に由来し、中身も現実の物理学や数学の話が大量に盛り込まれた原作です。人にとってはそれが苦手意識を働かせもします。Netflix版「三体」はそんな心理を見透かしてか、1話の前半パートで天才リケジョ気分にさせるような演出があります。ラテン系小悪魔美女と言われるエイザ・ゴンザレスが演じるオギーがバーでナンパされて早々に「私は、自己組織化ナノファイバーを設計しているわ」とわざと相手がわからないことを言って追い返すシーンがそれです。
「トランスフォーマー」を手掛けたマイケル・ベイ監督作「アンビュランス」(2022)などに出演するこのエイザのほか、「ドクター・ストレンジ」「アベンジャーズ」シリーズの魔術師ウォン役でお馴染みのベネディクト・ウォンは刑事役として出演し、ハリウッド大作で名を売る役者の起用で巧みに興味を引きます。
Netflix「三体」原作改変問題
ゲースロ役者も主要な役どころで登場します。玉葱の騎士役だったリアム・カニンガムは先のベネディクト・ウォン演じるダーシー刑事の上司役、ジョン・スノウの親友サム役だったジョン・ブラッドリーは勢いではったりをかます男ジョンを演じています。ほかにもジョナサン・プライスやコンリース・ヒル、マーク・ゲイティスといった面々が起用されています。
ゲースロのキャラクターが刷り込まれたファンにとってはあの役の俳優がこの役をと、そんな楽しみ方ができるわけですが、原作ファンにとっては冒頭の60年代の中国文化大革命の惨たらしいシーンこそ入り込めるものの、転じた場面ですぐに違和感を覚えるのかもしれません。というのも、Netflix版「三体」では最も尺が長い現代パートを原作から大きく改変、まるごとイギリスに移しているからです。
映像化にあたって改変することについては海外でもなおざりにすることはご法度です。ドラマを企画したNetflixは「三体」を実写英語版として作る許可を得ると同時に、クリエイターと共に2020年の創作初期の段階から原作者の劉慈欣に改変内容についてZoom会議で話を行い、了承してもらったことをNetflix公式プロダクションノートで事細かく記しています。
キャスティングからも察することができますが、キャラクターも出身地がさまざまな多様性あるキャラクターに改変されています。演じている役者たち本人はNetflix版「三体」のこの設定をどう思っているのか気になるところ。全世界配信された3月21日に合わせて行われたロンドン現地の前夜祭イベントと取材会に参加したリアム・カニンガムに直接尋ねると、快く応えてくれました。
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