なぜ習慣に頼るのか?
あなたのいつもの朝を思い浮かべてみてほしい。
家を出るまでのあいだにも、あなたはいくつもの意思決定をしている。何を着るか、何を食べるか、どのルートで職場に向かうか。そのほかにもあれこれと選択をする。
朝だけではない。生活のあらゆる場面が、決定しなければならない選択でいっぱいだ。ささいなことから重大なものまでさまざまだが、そのすべてを意識して決めてはいない。選択1つひとつを真剣に吟味していたら、それだけで一日が終わってしまう。
プリンストン大学の心理学者スーザン・フィスクの言葉を借りれば、人間は「認知的倹約家」なのだ。思考すると認知のエネルギーを消耗する。だから、そのエネルギーをなるべく使わずに済まそうとする。
ノーベル賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマンは、この現象をさらに絶妙に表現した。「人間にとって『考える』というのは、ネコにとっての『泳ぐ』。できなくはないが、なるべくしたくない」。
可能な限り頭をはたらかさずに済むように、買い物などの決断において、人は習慣に頼る――つまり、同じ状況では同じことをただ繰り返すのだ。
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