「不確実な報酬」で売上をアップする巧妙な戦略 不確実性による「ワクワク感」が行動を導く

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消費者の行動を習慣化させるための方策として、報酬や褒美の設定について考えてみよう。

行動を習慣化するためには、それで何かしら報酬が得られなくてはならない――心理的に報われる感覚でもいいし、身体的・物理的な褒美でもいいし、文字どおり金銭的な報酬でもいい。

習慣形成の方法としては、おそらくこれがもっとも幅広く応用しやすいのだが、残念ながらマーケティングキャンペーンで充分に活用されているとは言いがたい。実は、ただ報酬を出すのではなく、もっと効果的に出す方法がある。報酬を不確実にするのだ。

実験で明らかにした不確実な報酬の威力

不確実な報酬の威力を明らかにしたのは、『レビュー・オブ・ゼネラルサイコロジー』誌が「20世紀でもっとも影響力のある心理学者」と呼んだB・F・スキナーである。

彼は1930年に「スキナー箱」というシンプルな実験装置を発明した。何の変哲もない木製の箱で、中にレバーがついている。レバーを押すとエサが出てくる仕組みだ。

スキナーはこの箱を使って、ハトからラットまで、さまざまな動物の行動を観察した。

箱に入れられた実験動物たちは、最初のうちはレバーに関心を示さない。ところがしばらくして偶然レバーにぶつかり、エサが出てくるのを見て驚く。

ぶつかる、エサが出てくる、というパターンが何回か続くと、実験動物はレバーの役割を学習する。それからは箱に入れられたとたん一目散にレバーのもとへすっ飛んでいって、繰り返し押し始める。

スキナーはこの報酬システムを利用して、動物たちにさまざまな芸を憶えさせた。芸の内容はどんどん高度になった。どこまでさせられるか実証した驚異的なデモンストレーションでは、スキナーの教え子がウサギに1ドル硬貨を拾わせ、それを硬貨挿入口に入れさせている。硬貨を入れればエサが出てくるからだ。

スキナー自身は、もっとも強力なインセンティブを特定する研究にキャリアを捧げた。

その過程で、不確実な報酬のほうが確実な報酬よりも影響力が大きいことがわかった。決められた動作をすると毎回ご褒美のエサが出るのではなく、あるときは出るが別のときは出ない、という仕組みにしたほうが、動物たちはその動作をいっそう熱心に行うようになるのだ。

興味深い発見だが、これはラットやハトだけでなく人間にも当てはまることがわかっている。

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