「カナさん!」
そこには、ラフなタイパンツに黒い洋服、首にはベージュ色の大きなマフラーを巻いたカナさんの姿があった。
マフラーの上からヒマラヤ山脈の雪のような白い布をまとっている。そのいでたちは、山の女神さまの化身のように思えた。
辺境の地を旅する「もう一人の日本人」
「ごっつさん、スピティに来たんですね。てっきりラダックに行くと思っていました」
「ところで、宿を探してるんだけど、イイとこ知らない?」
「カザ、宿が少ないんですよ。私の泊まっているところ安いんで、そこに泊まります?」
彼女は標高4166mに位置するチベット僧院・キーゴンパに行き(チベット語で寺院のことをゴンパという)、その帰り道、偶然にもカザの街に立ち寄ったとのこと。
キーゴンパとは11世紀に設立された岩山の上に砦のように建つスピティ最大の修道院で、ラマ(チベット僧侶)のための宗教訓練道場。標高4000m超えの村からカザに下りてきたから、息がしやすく過ごしやすいとサラリと話していた。
彼女の泊まっている宿に行き部屋に入ると、そこは、まるで山小屋の一室。
簡易なベッドだけがあり、テーブルもない。電灯もなく、部屋に大きなキャンドルが1つあるだけだ。
やはり、5年近く旅を続けているので宿の節約術にも長けている。
※後編へつづく
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