車の進行を拒むヤギの群れ
車両の前方が水につかると、ガタンという音がし、タイヤが底についたのを感じとった。
それほど深くはなさそうだ。車内への浸水も見受けられない。
そのままスルスルと川に入水し、真ん中あたりまで進むと、窓から水しぶきが上がるのが見えた。時速は5キロぐらい。
俺は少し興奮し、「ヒュー」と声をあげた。車酔いしていたインド人と目が合うと、彼は目をまん丸にし、にこりと笑う表情を作った。
不思議なことに直接触ってないにもかかわらず、水の感触を感じる。なんだか気持ちがいい。
1分くらいかかって川を越え、最後はガタガタという音がして、道路とタイヤが緊密に噛み合うのを感じた。車内に安堵の空気が流れる。車のカセットから流れるチベット音楽が心地良い調べを奏でていた。
さらに道を進むと、また車が止まった。山肌を降りてきたヤギの群れが立ち去るのを待つためだ。


















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