子の「一番」を褒めるとやる気をなくしかねない訳 比較の褒め方は比較対象が変わると容易に結果が変わる

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これまでの研究から、①能力や結果を褒めること、②他者との比較で褒めることはおすすめできないことがわかってきています。

有名なものとしては、スタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエック教授の研究があります。この実験では思春期の子ども数百人を対象に、難しい問題10問を解かせます。その後、子どもたちを、①能力を褒められたグループ、②努力を褒められたグループの2つに分けます。

次に、それぞれのグループの子どもたちに、先ほどやった問題よりも難しいテストと簡単なテストの2種類の選択肢を与え、どちらか好きな方を選ぶように指示を出します。ここで、興味深い違いが出るのです。

「1番」を褒めてもやる気は出ない

能力を褒められたグループでは、70%近くが簡単な問題を選びました。一方、努力を褒められたグループでは、90%が難しい問題にチャレンジする方を選んだのです。能力を褒められたグループでは評価を気にしてしまうため、簡単な問題を解いて自分の能力が高いことを示そうとします。努力を褒められたグループでは努力を示せる方、チャレンジを恐れない心意気を示せる方に興味がいくようになるのです。

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今回のケースのように「クラスで1番だったね」とか「みんなよりも上手にできていたね」といった相対評価や社会的評価に頼った比較の褒め方は、短期的なモチベーションアップには効果を発揮します。

しかし、最終的には子どもが考える力を伸ばす結果にならないとわかってきています。なぜなら比較の褒め方は、比較対象が変化した場合、容易に結果が変わってしまうからです。

例えば、塾のクラスで一番の成績を取り、1つ上のクラスに上がれたとします。「クラスで1番になってすごいね!」と褒められたとしても、上がった先のクラスではすぐには1番になれないでしょう。

すると、「1番」を褒められることをモチベーションとしていたパワーは急速に失われ、やる気をなくしてしまいかねません。これは、ご褒美やもので釣った場合でも同じだといわれています。

今回のケースの場合は、1番だったという結果を褒めるのではなく、「練習を頑張った」という過程を褒めてあげることが、その子が後々かけっこに対しての捉え方を自分で考えたり、決められたりするいいヒントになるのです。

柳澤 綾子 医師、医学博士

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やなぎさわ あやこ / Ayako Yanagisawa

医師、医学博士。東京大学医学系研究科公衆衛生学客員研究員、国立国際医療研究センター元特任研究員。麻酔科専門医指導医。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。公衆衛生学を専攻し、社会疫学、医療経済学およびデータサイエンスを専門としている。エビデンスに基づいた最新の医療、教育、子育てに関する有益な情報を発信。自らも二児の母であり、データに基づく論理的思考と行動を親たちに伝える講演や記事監修、執筆なども行っている。現在は株式会社Global Evidence Japan代表取締役として、母親目線からの健康と教育への啓発活動も精力的に行っている。

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