カリスマ「ビール売り子」と新人の決定的な差 「5時間で売り上げ2倍」の開き出る5つの理由
新人売り子の猪野さんは、ビールをカップからこぼさないよう、ていねいに注いでいく。
一方、カリスマ売り子の佐藤さんは、時々、注ぎ口に目をやるものの基本的には上を見上げて客席を見渡す。ビール1杯をカップに注ぐ時間自体は新人もカリスマもほぼ同じだが、この時間をどう過ごすかで差がつくというワケ。ビールを注ぎながら客席を見渡す間、自分に向かって手をあげる客がいれば笑顔で大きくうなずく。
こうするだけで、もし別の売り子が近くを通っても、その客は自分が行くまで待っていてくれると言うのだ。
さらに佐藤さんは反対側のスタンドを指差しながら教えてくれた。
「こうしてみるとよくわかるんですが……上段の座席って売り子がほとんど行かないんです。やっぱり体がキツイから」
売り子が背負うタンクの重さはおよそ15キログラム。それを背負って炎天下の中、急な階段を上ったり下りたりするのは確かにきつい。ただ、お客側からすれば、わざわざ階段をおりてビールを買うのも億劫なワケで、売りにきてくれる売り子がいれば一斉に注文が殺到する。しかも、ライバルが少ないとなれば売り上げを伸ばす絶好のチャンスとなるのだ!
そして試合は大きく動いた。
次につなげるコミュニケーション術
ホームの選手が逆転ホームラン!客席が一気に湧いた!!
このとき新人の猪野さんは、売り上げを伸ばすチャンスとばかりに懸命に声をかけた。一方、カリスマ売り子の佐藤さんはといえば……なんと観客と一緒に盛り上がり、あちこちでハイタッチ!さらには仲良くなった観客の隣に座りこみ、観戦を決め込む。もちろん、この間ビールの売り上げは完全に止まるが、こうして同じチームを応援する一員として絆を深めることで、次回以降の常連を増やすことにつなげているのだった。
結果、この日、新人売り子の猪野さんは110杯で7万7000円の売り上げ、カリスマ売り子の佐藤さんは215杯、15万0500円の売り上げとなり、数時間でほぼ2倍の大差がついた。当然ながら、歩合給もそれだけ違ってくる。推定だが、猪野さんと佐藤さんの日給は1万円近い開きがあるとみられる。
歩き回ってビールを売る。単純そうに見える仕事ながら、細部にこだわると大きな「差」が生まれる。それはまさにトップセールスマンの仕事の流儀にも通じる、まさに緻密な営業戦略そのものである。
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