カリスマ「ビール売り子」と新人の決定的な差 「5時間で売り上げ2倍」の開き出る5つの理由
そして、試合開始2時間前。開場と同時にいよいよ仕事スタート!
まず、新人売り子の猪野さんは、続々と埋まる客席にむかって大きな声を張り上げた。そして球場をねり歩くこと10分。ようやく最初の1杯を売る。
一方、カリスマ売り子の佐藤さん。とりわけ声を張り上げることもなく、何かを探すように客席に目をやった。彼女の目的は常連さん。実は試合が始まるとすべての売り子は販売エリアを固定されてしまうため、試合開始前はエリア外に座っている常連さんを探す時間にあてるのだ。そうして「見つけた~!」などと歓喜の声をあげながら常連客のところへ小走りで向かい、最初の1杯を買ってもらう。
お客側からしてみれば、大勢いる中からわざわざ自分を見つけて駆け寄ってきてくれるのだから、悪い気はしない。さらに、佐藤さんが必ずやっていることがあった。客から「お姉ちゃん、次の試合は出てくるの~?」などと声をかけられたら、「はい!」と元気に応えつつ、すかさず一言……「次はどの辺りに座っているんですか?」と返す。
こうして、常連客の座席をさりげなく聞き出し、チェック!約束どおり必ずバイトに入るのはもちろんのこと、教えてもらった席を忘れないように手の甲にメモ。こうした地道な努力でひとりずつ常連客の数を増やし、彼らの心をわしづかみにしているのだ。
そしていよいよ試合開始。販売エリアが固定されてからは、常連以外の客もしっかり捕まえる。
タイミングの取り方でも販売数に差が
コボスタ宮城スタジアムには、団体客が仲間同士ワイワイ楽しめる専用の座席が用意されている。売り上げを一気にのばせるチャンスだが……新人売り子の猪野さんは、積極的に声をかけにいったが、なかなか買ってもらえない。
一方、カリスマ売り子の佐藤さん。団体客に目をつけてはいるもののなかなか声を掛けようとしない。いったいなぜなのか?佐藤さんいわく「団体さんは、席決めなどやらなければならないことがいろいろあって落ち着くまではビールどころじゃない」。
そこで、ライバルの売り子に横取りされないよう、団体客のそばをつかず離れずの微妙な距離をうろうろしつつ、客側から声をかけられるのを待つのだ。そうして待つことおよそ5分。狙いどおり、佐藤さんに声が掛かった。このときは一度に18杯を販売し、売り上げにして1万2000円を獲得した。
試合中盤。カリスマはさらなる「差」を見せつけてくれた。