DXが進むことでマネジャーが失う「武器」と変化 専門マネジャーの登場でキャリアはどうなる

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5つ目はネットワーキングの力、言い換えれば人脈です。これからの時代、社内に閉じた人脈しかない人は結果が残せません。自分からどんどん情報発信をしたり、外に出ることで良い人脈を構築しておきたいものです。良い人脈は良い人材を引き寄せますので、これも好循環構造をもたらしてくれます。

専門のマネジャーが登場する?

ここまでの議論を読んで「自分には無理」と思われた方も多いかもしれません。実際に先述したマネジャー像を体現できる人材は多くはないでしょう。

一方で、IT新時代ならではの、より特定の分野に専門特化したマネジャーが登場すると見る向きもあります。たとえば人材育成の専門のマネジャーです。生成AIが進化する結果、良質の一時体験を皆が経験することは難しくなります。それゆえ、人工的に実践的なトレーニングの場を作る専門的なマネジャーが必要になるのではという発想です。

あるいは外部とのコミュニケーションの専門家のようなマネジャーも必要となるかもしれません。ダイバーシティが増したり人々の価値観がより多様化する中で、対人コミュニケーション業務も複雑になるからです。AIには真似できない、きわめて難易度の高い感情労働を管理するマネジャーの需要が生まれるかもしれないのです。

いわゆるゼネラルマネジャーだけがマネジャーではありません。IT新時代にどのようなタイプのマネジャーが新たに必要になるかを考え、そのキャリアを歩めるかを検討することもこれからは必要になるでしょう。

嶋田 毅 グロービス経営大学院教授、グロービス出版局長

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しまだ つよし / Tsuyoshi Shimada

グロービス経営大学院教員、グロービス出版局長。東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計160万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。著書に『MBA 100の基本』『ビジネスで使える数学の基本が1冊でざっくりわかる本』『KPI大全』(以上東洋経済新報社)、『グロービスMBAミドルマネジメント』(ダイヤモンド社)など。経営戦略、テクノベート・ストラテジー、研究プロジェクトなどの講師を務めるほか、各所で講演なども行っている。

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