「田舎/夏/恋人消える物語」なぜTikTokでバズる? SNS時代に特化した「ブルーライト文芸」のキャラ

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『時をかける少女』の表紙が、もしブルーライト文芸的になれば……とても”売れそう”な気がするのは筆者だけだろうか(amazonより)

それこそ『時かけ』も新装版で出たら、loundrawさんがイラストを描いているかもしれませんね」

前編でも確認した通り、日本の文学作品にはストーリー展開においてブルーライト文芸的な趣を持ったものも多い。

そうしたものが、これから遡行的にブルーライト文芸のように括られる可能性もあるのだ。

ブルーライト文芸のカギは「エモ」が握る?

このように中高生から受け入れられやすいキャラクターやイラストを用いて、文学への間口を広げているブルーライト文芸。

インタビューでは、ブルーライト文芸に見られる「エモい」という感覚にも言及があった。それらの文芸作品が持っている表紙は「エモい」ものとして語られがちであるし、ブルーライト文芸に大きな役割を果たした新海誠の作品は「エモ」という感性を広げるにあたって大きな役割を果たしたこともある。また、消費文化の側面では、近年若者の新しい消費形態として「エモ消費」という言葉が生まれている。

いずれにしても、ブルーライト文芸のムーブメントを読み解くにも、この「エモい」という感情を理解することが、一つの重要な手がかりになるだろう。

今、書店の棚をにわかに賑わせている「ブルーライト文芸」。そこには、現代の若者のニーズや、社会の変化が確かに刻まれているのである。

谷頭 和希 チェーンストア研究家・ライター

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

チェーンストア研究家・ライター。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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