SNSが生活を覆う時代、個人は、いくつかのアカウントによって、常にスイッチングが可能になってきた。いわゆる「別垢」でまったく異なる人間関係とつながることも可能になった。
さらに、SNSを見れば、まばゆい活躍をしている、特別な同世代はいくらでも目にすることができる。
ある意味では、自分自身が一人の人間という固有の存在ではなく、切り替えも代替も可能な一人であるに過ぎない……。
その意味でブルーライト文芸に登場する、無個性かつ匿名性の高いキャラクターは、SNS時代に適合したキャラクター像だともいえるだろう。
また、ぺシミ氏は元々中高生が読んでいたライトノベルの衰退も挙げる。
「今のライトノベルは、中高生に売ることを諦めているように感じます。タイトルもセンシティブで、学校では読めないものも多い。また、女性向けのラノベでも悪役令嬢とか婚約破棄みたいなものが多くて、はたして、そんな人間関係にドロドロしたストーリーを中高生が読みたいかというと疑問です。
なので、今の高校生にとってリアリティがあるのは、ブルーライト文芸的な描かれ方の青春小説なのではないでしょうか。ライトノベルが吸収できない層をライト文芸が吸収している側面はあって、中高生が自分に共感できるものを求めていった結果、ライト文芸が盛り上がりつつあるのではないかと思います」
そのうえで、ペシミ氏はこう指摘する。
「以前は子どもが本を読む順番として、児童書から青い鳥文庫に移動して、それと近いライトノベルを読みあさり、次第に大衆文学へ移行していくという流れがあったと思います。
しかし、今は児童書と大衆文学の間にライトノベルを挟まず、ブルーライト文芸から直に接続しているのではないでしょうか」
ブルーライト文芸が、文学作品への一つの間口になっているともいえるのだ。
TikTokとブルーライト文芸はなぜ親和性が高いのか
また、ブルーライト文芸が中高生に人気の理由としては、TikTokとのコラボレーションが挙げられる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら