快進撃のトランプ氏「13指標」で見た再選の現実味 過去の大統領選を的中、リットマン氏に聞く

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――教授は4年前、「世論調査は、その時々のスナップショットにすぎない」と言いました。今も世論調査を信じていないのですか。確かに2016年の大統領選ではクリントン氏の勝利が確実視されていましたが、まさかのトランプ勝利でした。今回は、激戦州を含め、トランプ前大統領の優勢とバイデン大統領の劣勢が報じられています。

私は今も世論調査など信じていない。特に、早い段階での世論調査には何の意味もない。1980年の大統領選では、現職のカーター大統領(民主党)が世論調査で優勢だったが、対抗馬のロナルド・レーガンが圧勝した。

また、大統領選が数カ月後に迫った1988年6月、レーガン政権下のブッシュ副大統領(親)は世論調査で、民主党のマイケル・デュカキス(マサチューセッツ州知事)に18ポイントも水をあけられていた。だが、実際には、ブッシュが難なくデュカキスを破った。わずか数カ月で25ポイントも追い上げたのだ。

トランプは多くの世論調査でバイデン大統領の支持率を上回っているが、バイデン優勢を示す世論調査もある。世論調査を見ても、確かな動向などつかめない。トランプ前大統領の判決がまだ出ていないことを考えると、なおさらだ。裁判の行方次第では、情勢が一変する可能性がある。現段階での世論調査は「無意味」の一言だ。

――トランプ前大統領に有罪判決が下ったら、大統領選にどのような影響が及ぶでしょうか。

大統領選前に、何らかの事件で有罪判決が下る可能性は高い。世論調査に影響が出るだろう。とはいえ、私の選挙予測には何ら影響は及ばない。見てのとおり、13のカギのうち、トランプ前大統領に関するものは「対立候補にカリスマ性がない」という最後の指標だけだ。13のカギを見れば、世論調査を信頼すべきではない理由がまた1つ増えるのがわかるだろう。

共和党予備選「トランプ氏が独り勝ち」のワケ

――教授は4年前、大統領選は「現政権による統治への信任投票」だと言いました。だとすれば、「統治」に失敗して国民の信任を得られず、再選されなかったトランプ氏が、なぜ共和党予備選で独り勝ちの様相を呈しているのでしょう?

岩盤支持層によるトランプ人気はアメリカ政治における「驚くべき現象」であり、前代未聞だ。トランプが2015年6月に翌年の大統領選への出馬を宣言して以来、彼の支持率は一貫して40%前後を保っている。トランプが何をしようが、支持率に何ら影響が出ないのだ。

なぜか。現状に不満を抱える白人有権者の心をつかんだからだ。彼らは、トランプが「自分たちのために戦ってくれる」と信じている。戦ってくれるかぎり、「彼が何をしようが支持する」と考えているのだろう。トランプが岩盤支持層をしっかりつなぎとめている理由は、そこにある。

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