快進撃のトランプ氏「13指標」で見た再選の現実味 過去の大統領選を的中、リットマン氏に聞く

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彼らはトランプへの批判など歯牙にもかけない。しょせんバイデン派や社会主義者、ロビイストや既得権益者といった「スワンプ(汚水・泥水)」が言っていることだと考えている(注: 2016年大統領選で、トランプ氏は「Drain the Swamp(汚水を抜く・泥水をかき出す)」をスローガンに、米政界の汚職や既得権益を一掃すると訴えた)。

一方、バイデン政権や民主党は発信力に乏しい。1960年代(に公民権法などを誕生させた民主党のリンドン・ジョンソン大統領)以来、バイデンほど、内政で多くの成果を上げた大統領はいない。彼の「統治」は上々だが、有権者には、それが伝わっていない。だから、支持率に反映されず、低迷し続けている。

トランプ氏再選で「独裁政治」のリスク

――トランプ氏の復活に伴う最大のリスクは?

独裁政治だ。世界中で、独裁政治への動きが顕在化している。ロシアは言うまでもないが、トルコやハンガリー、ブラジルでもそうだ。インドも例外ではない。

トランプは世界のトレンドを象徴している。彼は、大統領に返り咲いたら「就任初日だけ『独裁者』になる」と宣言している(注:不法移民を阻止すべくメキシコ国境の閉鎖を断行する、などと明言)。

だが、初日に独裁者になる大統領は永遠に独裁者だ。世界史を振り返れば、わかる。初日だけ独裁者になり、2日目以降に「俺はもう独裁者じゃない」などと翻意した指導者はいない。

ひとたび独裁者になったら、ずっと独裁者だ。トランプが、アメリカの大統領という絶大な権力を再び手にしたら、アメリカという民主主義国家に真の脅威をもたらす。民主主義はかけがえのないものだが、他の貴重なものと同様に、破壊されるおそれがある。

民主主義の最初の黄金時代は、第1次世界大戦(1914~1918年)のすぐ後に訪れた。それまでごくわずかだった民主主義国家が20カ国以上に増えたのだ。だが、(第2次世界大戦が終結する)1940年代半ばまでに、その数は半分以下に減った。

そして、21世紀の今、世界中で民主主義が衰退している。独裁政治・権威主義の傾向が強まっているのだ。「もしトラ」が現実のものとなれば、アメリカも対岸の火事ではすまなくなる。

肥田 美佐子 ニューヨーク在住ジャーナリスト

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ひだ みさこ / Misako Hida

東京都出身。『ニューズウィーク日本版』編集などを経て、単身ニューヨークに移住。アメリカのメディア系企業などに勤務後、独立。アメリカの経済問題や大統領選を取材。ジョセフ・E・スティグリッツなどのノーベル賞受賞経済学者、「破壊的イノベーション」のクレイトン・M・クリステンセン、ベストセラー作家・ジャーナリストのマルコム・グラッドウェルやマイケル・ルイス、ビリオネア起業家のトーマス・M・シーベル、ジム・オニール元ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長(英国)など、欧米識者への取材多数。(連絡先:info@misakohida.com)

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