快進撃のトランプ氏「13指標」で見た再選の現実味 過去の大統領選を的中、リットマン氏に聞く

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――2021年8月30日に行われたアメリカ軍のアフガニスタン撤退について、アメリカのメディアは「準備不足」などとさかんに批判しました。これは外交・軍事上の大きな失策ではないのでしょうか。過激派組織「イスラム国」(IS)系の組織による自爆テロで、多くのアフガン市民が犠牲になり、アメリカ軍にも複数の死者が出ました。

失敗どころか、アフガン撤退は大きな成功だった。これまでのアメリカ軍の撤退のなかで、最大の成功と言ってもいい。確かに犠牲者は出たが、自爆テロは防ぎようがない。それにもかかわらず、米メディアは、「撤退は失敗だった」と喧伝した。

だが、世間は、もはやアフガン撤退問題など覚えていない。共和党予備選のテレビ討論会でさえ、アフガン撤退問題を持ちだす候補者などいなかった。アフガン撤退問題の報道は、私が覚えているかぎり、アメリカのメディア史における最も恥ずべき出来事の1つだ。アフガン撤退という問題の本質をないがしろにする、とんでもない報道ぶりだった。

ベトナム戦争を思い出してほしい。1970年代に行われた同戦争からの撤退(や脱出)のほうが、はるかにひどいものだった。しかも、アメリカ人はアフガン撤退を支持していた。世間に悪いイメージが植え付けられたのは、アメリカのメディアの報道によるところが大きい。何より世間の関心は中東やウクライナに移っている。

――「⑪外交・軍事政策で大きな功績を上げた」は「正しくない(ノー)」ですよね。バイデン政権はまだ主要な功績を上げていません。

そのとおりだ。ロシア・ウクライナ戦争やイスラエル・ガザ戦争の行方次第だが、今のところ、大きな軍事上の功績はなく、バイデン政権にとって不利だ。とはいえ、今後の情勢次第では変わる可能性もある。

トランプ氏に強いカリスマ性はない

――残り2つの指標「⑫現職にカリスマ性がある」「⑬対立候補にカリスマ性がない」は候補者に関するものですが、⑫は「正しくない(ノー)」ですよね。

そうだ。バイデン大統領は、民主党のフランクリン・ルーズベルト大統領のような国民的ヒーローとは言えない(注:ルーズベルト大統領は1933年、ニューディール政策を打ち出し、アメリカを大恐慌から復活へと導いた)。このカギはバイデン大統領にとって不利であり、今後も答えは変わらない。

――⑬はどうですか。教授は4年前、筆者の取材に対し、トランプ氏にはレーガン大統領やオバマ大統領のような強いカリスマ性はないと言いましたが、今でも同じ見解ですか。トランプ氏は複数の刑事事件で起訴されていますが、共和党予備選で圧勝しています。

むしろ4年前より、その確信を深めているよ。彼は、一部の岩盤支持層に受けているだけだ。レーガンやルーズベルトのように、幅広い有権者層に訴えるだけの力はない。レーガンは共和党だったが、民主党にも多くの支持者がいた。

民主党のトランプ支持者など聞いたことがない。私が言うところの「カリスマ性」は、党派性を超え、広範なアメリカの有権者にアピールする力を指す。つまり、⑬はバイデン大統領に有利であり、今後も変わらない。

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