日本酒「"添加物"で伝統的造り方が減少」は問題か 「速醸」が発明されて…「簡略化の功罪」を考える

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「速醸」「高温糖化」が広がったことで、安定的に日本酒が生産され、価格が安くなったことは間違いのないことです。

しかし、昔ながらの「生酛造り」「山廃仕込み」こそが本来の酒であり、これが「『添加物(乳酸)を使う速醸』によって壊された」と嘆く日本酒ファンも少なくありません

酒屋も「生酛造り」「山廃仕込み」がどんどん減っていくことを憂いています。私もそこは残念に思います。室町・江戸時代から連綿と続く日本の伝統文化ですから、残ってほしいという気持ちはあります。

日本酒にも「添加物の功罪」がある

しかし、この「乳酸の添加」によって速醸酛を造ることで、大変な重労働から解放され、日本酒が安定生産できるようになったことは間違いありません。

私は『食品の裏側』を発売以降、一貫して「加工食品の裏側」を明かすことで、「添加物の功罪(メリット・デメリット)」を消費者のみなさんに伝えてきました。

添加物の「罪(デメリット)」を避けたい人、「何を食べたらいいか」迷う人のために、15年かけて、「無添加」でも簡単においしい食事が作れる「魔法の調味料」を開発し、レシピ集『安部ごはん』としてまとめました。

『食品の裏側』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

ただ、添加物には「安い・簡単・便利」などのメリットがあるのも事実で、こと「添加物の功罪」という視点でいえば、日本酒に関しては「功」のほうが大きいとも私は考えています。

とはいえ、簡略しすぎもいかがなものでしょう。

生米をすり潰して、「乳酸」「アミラーゼ」などの添加物を駆使して造った酒が高く売れているというのは、なんだかおかしな現象のように私には思えてなりません。

いずれにしてもみなさん、ブームや目新しさにとらわれず、ご自分の舌で「本当においしい酒」を選んでいただきたいと思います。

安部 司 『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事

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あべ つかさ / Tsukasa Abe

1951年、福岡県の農家に生まれる。山口大学文理学部化学科を卒業後、総合商社食品課に勤務する。退職後は、海外での食品の開発輸入や、無添加食品等の開発、伝統食品の復活に取り組んでいる。NPO熊本県有機農業研究会JAS判定員、経済産業省水質第一種公害防止管理者を務めつつ、食品製造関係工業所有権(特許)4件を取得。開発した商品は300品目以上。

2005年に上梓した『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物』(東洋経済新報社)は、食品添加物の現状や食生活の危機を訴え、70万部を突破するベストセラーに。その他の著書に『食品の裏側2 実態編 やっぱり大好き食品添加物』(東洋経済新報社)などがある。

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