日本酒「"添加物"で伝統的造り方が減少」は問題か 「速醸」が発明されて…「簡略化の功罪」を考える

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同じ明治時代に、「速醸(そくじょう)」という製法が発明されました。

これは、「酛(もと)」を造る段階で、人工的に作られた「乳酸」を添加する方法です。「添加物の乳酸」が液体で売られているのです。

これを直接添加すれば、「山卸(やまおろ)し」も「山廃(やまはい)」も不要で、「酛」ができます。この「酛」を「速醸酛」といいます。

この速醸によって、酛造りの期間を3分の1に短縮できるようになりました。

現在、日本で造られているお酒の9割以上が、この「速醸酛方式」です。

「山卸し・山廃」方式では酛造りに2~3週間かかるところ、この「速醸酛方式」だと2~5日程度で完成します。

これによってコストも下げられ、通年製造することが可能になりました。

昭和に入って、さらに「簡略化する方法」が考案された

その後、昭和に入ると、さらに工程を簡略化する方法が考案されました。

先ほど「①麹造り」で、麹がでんぷんを糖に変えると述べました。

それなら蒸した米に「アミラーゼ」といった酵素を添加してしまえば、でんぷんが早く糖に変わり、麹も少なくて済みます。このとき、温度を上げると酵素がより働くから、温度を55度ぐらいまで上げます。

ここに乳酸を添加すれば、より早く酛が出来上がるわけです。これは「高温糖化酛」と呼ばれます。

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