日本酒「"添加物"で伝統的造り方が減少」は問題か 「速醸」が発明されて…「簡略化の功罪」を考える

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さらに簡略化が進みます。

米を蒸す過程を省略して、生米をすりつぶして粉末化したものに水を入れて「米粉水」を作るのです。これを80度の高温にして酵素を入れると、すり潰された米が全部、オリゴ糖やブドウ糖などの糖に変わります。

これを「液化仕込み」あるいは「融米(ゆうまい)仕込み」と呼びます。

本来なら、酛(もと)を造るのに2週間もかかるのが、この「液化仕込み」なら、ほんの短時間でできるのです。

先にちょっと触れましたが、昔から日本酒は「寒造り」といって極寒の中で造られてきました寒い時期が、最も雑菌が繁殖しづらいからです。

しかし、この方法なら、コンピューターで温度管理をするから、寒造りなどは必要ありません季節を問わず大量生産が可能です。

「生酛造り・山廃仕込み」「速醸」どちらがおいしい?

では、この「生酛造り・山廃仕込み」と「速醸」はどちらがおいしいのでしょうか。

私の個人的な感想ですが「生酛造り・山廃仕込み」は「速醸」よりおいしく感じます。伝統的な生酛の力でじっくり発酵させることで、「複雑なうま味」が醸し出されるから、酒に力があります。

「生酛造り・山廃仕込み」は酸度・アミノ酸度が高く、うま味が強いのに対し、「速醸」は酸度・アミノ酸度ともに低く感じます。

ただし、酒はあくまで嗜好品です。

「速醸」「液化仕込み」は「淡麗」という言い方をされ、このほうがおいしいという人もいるわけです。爆発的人気となったブランド酒も「速醸方式」です。

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