シニア人材は「野村再生工場」方式で再活躍できる 野村克也氏の選手指導法をビジネスにも応用

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では、何を観察するのでしょうか。もちろん、能力、本人のやる気や適性もありますが、こと中小企業においては「上司との関係」を観察することが重要です。

中小企業の場合、制度としてのジョブローテーションがないことも多く、そりが合わない上司の下で実力を発揮できない、という人材がミドル・シニアであっても出てしまいがちです。

いまの上司からは「能力が低い」「やる気が感じられない」と思われていた人材が、別の上司の下では能力を発揮して貢献する、ということはあるものです。

なお、観察は当然上司にも及びます。つまり、「課長の○○さんは、シニア人材を持ち上げながら使うのがうまい」「□□さんは、新しい仕事をミドル人材に指導して成長させるのがうまい」など、「その上司にはどのようなタイプの人材が合うのか」も把握しておきましょう。

観察を踏まえ、「あの上司の下に、あの人材を配置すればお互い仕事がうまくいくのではないか」が見つかれば、それを第一歩として配置転換を考えるのです。

選手との「対話」が配置転換でも参考に

野村克也氏といえば、「ぼやき」でも有名です。一般的には、不満を伝えるぼやきは、ネガティブに捉えられます。しかし野村氏のぼやきは、選手指導のための戦略的なものであったといいます。

実際、野村再生工場の事例を見ても、ぼやきも含めた選手との「対話」を十分に行っている様子が見て取れます。

中小企業における配置転換においても同様で、異動対象者との対話は非常に重要なものです。定常的な配置転換でない場合、人によっては「この異動は退職勧告なのか」と受け止めかねません。

そうではなく、あくまでも「本人のさらなる活躍を意図したもの」であることを納得してもらうために、必要であれば複数回の対話の場を設け、人事部門から本人に伝える必要があります。

とはいえ、ここで「甘い言葉」だけ並べてしまうと、「適切な危機感」を持たせるのが難しくなります。

したがって、異動対象者との対話においては、

① いまの働きぶりでは、会社が期待する成果を上げていない
② この状況を変えるために、配置転換したい
③ 新たな仕事になじむための、時間と教育を提供する
④ 会社側は「あなたならできる」と期待している

といった進め方が必要です。

なお、異動対象者との信頼関係が築けていない場合、後になってパワハラ・セクハラの申し立てをされることもありえます。面談の場に、第三者にも同席してもらうことも検討しましょう。

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