シニア人材は「野村再生工場」方式で再活躍できる 野村克也氏の選手指導法をビジネスにも応用

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これを乗り越えるのが、提出されたレポートに対する上司からのコメントです。

「この指摘は的を射ています」というポジティブなものだけでなく、「この文章だと、私は○○さんのいいたいことが読み取れませんでした」「レポートの提出は受講の翌日までなので、その期日は守っていただけますか」など、改善を促すコメントで、上司の、あるいは会社側の期待値に対して、足りていない部分を本人に認識してもらいましょう。

なお、上司側には、厳しいことを言えるだけの信頼関係の構築が必要なことは、言うまでもありません。仮に配置転換が「合う、合わない」に基づいてなされた場合でも、相互理解に十分な時間をとることをお勧めします。

具体的な手法は、片岡裕司著『なんとかしたい!「ベテラン社員」がイキイキ動き出すマネジメント』(日本経済新聞出版社、2016年)の「仕事年表」や「自己探求シート」が参考になります。

配置転換成功の秘訣は「愛情」

『企業実務2月号』(日本実業出版社)書影をクリックすると企業実務公式サイトにジャンプします

ここまで、厳しい話も含めて、ミドル・シニア人材の配置転換成功のコツを解説してきましたが、最後に野村克也氏の著書から「再生工場」を成功させる秘訣を引用します。

野村氏は、「どうやって人を再生させるのですか?」と聞かれるたび、同じ答えを繰り返したそうです。それが、「その選手に対する愛、そして情熱です」というものです。

中小企業で人の問題に対処する際、一筋縄ではいかないことも多いものです。そのようなときでも、人材に対する責任感と、会社とお客様に対する愛情を持ち続けることこそが、ミドル・シニア人材の配置転換を成功させる秘訣といえるでしょう。

木田 知廣(きだ ともひろ)
筑波大学卒業後、アメリカ系人事コンサルティングファーム、ワトソンワイアットに入社。社会人向けMBAスクールのグロービスにて、グロービス経営大学院の前身となるプログラムの立ち上げに携わった。経営学の分野で有効性が実証された教育手法を使い、「情報の非対称性」を解消することをミッションとしてシンメトリー・ジャパンの代表に就任。国内企業の研修を行うとともに、アメリカ・マサチューセッツ大学MBA講師を務める。
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