「地震発生から自宅倒壊まで3秒」そのとき何が 「絶対」はない、だから考え続けるしかない

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幸い、大倉さん夫妻は無事でした。しかし、家から外に出て倒壊物に巻き込まれ、亡くなった方もいます。大倉さんたちも、たった一つでも条件が異なれば、命を失っていてもおかしくない状況でした。

生と死の境界線は、ほんの少しの偶然によって、白にも黒にもなってしまう、薄くにじんだ頼りない境界のようにも思えます。

「想定外」が起きるのが災害

ここで改めて皆さんと一緒に考えておきたいと思っているのは、災害時は「想定を超える事態が起きる」場合があるということです。

想定内の場合は、マニュアル通りの行動を素早く実行することが効果的です。けれども想定外の事態が起きたとき、マニュアルや“マルバツ思考”では逆効果になってしまうことがあります。

例えば、地震の際は、足をケガしないために靴を履くことが大切だと言われます。「裸足のまま飛び出すのはマルかバツか」といえば、答えは「バツ」になるでしょう。

一方で実際には、大ケガはするかもしれないけれど、倒壊する家から真っ先に裸足で外へ脱出したから助かった方もいます。

また避難のために非常持ち出し袋を準備することはとても大切なことです。しかし大倉さんの体験で言えば、スマートフォンすら取りに戻らなかったからこそ助かっています。

「靴は絶対履いて避難する」や「せっかく準備した持ち出し袋を持たねば」など、事前に想定している対策へのこだわりは、「想定外」の激しい揺れが起きたときには、柔軟に行動する足かせにもなります。

私は大倉さんの話を聞いて、家屋に耐震補強して終わりではなく、「それでも、もしかすると家が倒壊するかもしれない」ということまで考えておくことが、とっさのときの選択肢を増やすようにも思えました。

崩れたブロック塀
今回の能登半島地震で倒壊したブロック塀。隣の塀が倒れて通路を塞いでいる(写真:徳島大学 環境防災研究センター・上月康則教授)

あれこれ考えるのは面倒で、「答えを教えて!」と言いたくなるでしょう。その気持ちはよくわかります。しかし残念ながら、答えがない問題に次から次へと直面する、体もまったく思うように動かない、それが災害時なのです。

反面、確実に生存率を上げてくれるのが家屋の耐震性向上や家具の固定、ブロック塀の撤去、電柱の地中化といった、震災時の被害を少しでも減らすための環境整備です。

これらはせっかく平時にできる対策なのに、資金面でのハードルが高いことが障害になっています。今後は、国や各自治体もより一層、これらの対策に取り組んでいくことが課題になります。

あんどう りす アウトドア防災ガイド 兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科 博士後期課程在籍

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あんどう りす / Risu Andou

兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科博士後期課程。

災害時の避難行動と防災啓発情報の影響をテーマに研究を行い、特に地震時の室内被害(家具転倒や落下物)による人的被害の実態や、証拠に基づく防災啓発のあり方の研究に取り組んでいる。SATREPS国際共同研究(日本・トルコ)にも参加。

阪神・淡路大震災の被災体験をもとに2003年より全国で防災講演を行い、乳幼児防災や日常生活に防災を取り入れる実践的な防災教育を展開。研究仲間とともに、VRやARを活用した体験型防災教育や専門職向け研修も多数実施している。2025年地域安全学会論文奨励賞受賞。

Webサイト「あんどうりすのゆるっとアウトドア防災

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