ただ、最初にお断りしておきたいことがあります。大倉さんを含め、生き残った方々の中には、同じ体験をしながらも助からなかった方々に対し罪悪感を抱えている場合があります。
このお気持ちは、日本災害看護学会によると災害関連用語で「サバイバーズ・ギルト」と説明されることもあります。そんな中でも体験談をお話しくださったのは、少しでも誰かの役に立てば、また、今後の防災の研究に生かされることがあればという想いからです。
そのため、今から紹介する内容は、決して、生還のための唯一の正しい方法として紹介するものではなく、そして、同じ方法を選択できなかった人を責めるものでも、間違っていると発信するものではないことをお断りしておきたいと思います。
自宅はわずか2秒で崩れ落ちた
能登半島地震で最大震度7の地震は元日の16時10分に起きました。この4分前の16時6分でも、最大震度5強の地震が観測されています。
輪島市の自宅にいた大倉さんは、16時6分の地震の後、夫婦で玄関付近に移動して家の中で様子を見ていました。そして16時10分に震度7の地震が発生。そのとき大倉さんは、家がミシミシと大きく音を立てたのが聞こえたそうです。
これは「先ほどの地震とは違う」と直感した2人は「すぐ外に出よう」と決意しました。結果、わずか1秒ほどの瞬時に、玄関から飛び出したそうです。
とっさに外に出たため、スマートフォンも持っていませんでした。「外に出た」と思ったその瞬間、「立っていられず、振り倒され、その場で転び、体が勝手に移動し、はうこともできない、揺らされるままで、抗おうとしても何もできない」揺れに襲われたそうです。
気象庁の震度階級関連解説表には、震度6強から7について「立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れにほんろうされ、動くこともできず、飛ばされることもある」と書かれています。大倉さんの証言からも、いかに大きな揺れであったかがわかります。
大きな揺れに翻弄されている間、大倉さんが家の様子を見ると、家はわずか2秒で崩れたそうです。なぜ、2秒とわかったかというと、1と数える間に家が左に大きく揺れ、次の1と数える間に右側に大きく揺れたと思ったら、そこで家がつぶれたからだそうです。
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