偉人の名言は夜明けの前に放たれる
ついに、ここから自分の人生は好転するのではないか?
挫折した人間ほど、人生の転機に敏感だ。歴史に名を残す偉人たちは、その躍進の瞬間を巧みに表現する。作家の芥川龍之介もそうだった。
今でこそ名作として読み継がれる『羅生門』だが、最初に同人誌に発表したときは、目立った反応が得られなかった。労作だっただけに、失望も大きかったらしい。それでも書くことをやめず、芥川は『鼻』という作品で、夏目漱石から高く評価されることになる。
そのときの心情を、芥川は自身の生涯を振り返った『或阿呆の一生』で、こんなふうに表現している。
「夜は次第に明けて行った。彼はいつか或町の角に広い市場を見渡していた。市場に群がった人々や車はいずれも薔薇色に染まり出した」
その後、芥川が文壇で躍進することを思えば、このときに抱いた人生への期待は見当違いなものではなかった。
映画界で「喜劇王」として名を馳せたチャールズ・チャップリンも、学校にも通えない屋根裏暮らしの極貧生活から這い上がるとき、こんな言葉を口にした。
「私に必要なのは、チャンスだけです」
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