「AI先進国」になれるチャンスが日本にも到来 本郷バレーがシリコンバレーを超える可能性

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私の関わる経済学の分野でいうと、数年前に一橋大学の経済学の先生が香港工科大学に移ったことが話題になりました。年収が600万円から1500万円と2倍以上にアップしたうえ、マンションをあてがわれ、福利厚生も充実しているというのです。 ところが現在では、習近平体制に対する警戒心から、中国に行くことを避ける人が増えています。いつ財産を取られたり、横暴な弾圧をされたりするかわからないという怖さがあるからです。

逆に、中国の金持ちが日本に逃げてきて、六本木辺りのタワーマンションの上層階に移り住むようなことすら起きています。そこに日本の勝機があると考えられます。つまり、日本は安心安全で、政府に財産を取られることもなければ、政府を批判して捕まることはない、そういうことを売りにして、世界から優れた人材を獲得すべきでしょう。

政府の姿勢にも変化の兆し

優れた研究者に対して破格の報酬を出すというのは、これまでの日本ができなかったことです。学者なんてどうせ道楽でやっているのだから、給料なんて安くていいという価値観すらあります。ある意味で正しいのかもしれませんが、それではほかの国に勝てません。政府の姿勢は、ようやく変わってきました。

文部科学省は、2024年度からAI分野の優れた若手研究者に年2000万円を支給します。目的は人材流出を防ぐことです。ですがそれは最低ラインで、さらに世界中から人材を呼び込むべきでしょう。

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たとえば、年俸1億円で外国からトップクラスのAI研究者を10人ほど引き抜いて、東京大学の付近に住んでもらいます。それでもたった10億円しかかかりません。彼ら・彼女らに週に1回だけ大学で講義を行い、残りの時間は研究に専念してもらいます。もちろん研究アシスタントには大学院生を雇います。

こうするだけで、日本の学生のレベルが上がるだけでなく、世界中の学生が優れたAI研究者を目当てに日本に留学します。そのうえで、AI系ベンチャー企業の立ち上げ支援を強化すべきでしょう。元々東京大学の周辺は「本郷バレー」と呼ばれていて、AI系ベンチャーが集まっています。それを拡充させて、シリコンバレーを超えるような街へと本郷を発展させてはどうでしょうか?

ここでみなさんは「シリコンバレーを超えるのは絶対無理だろう」と考えたかもしれません。でも、それこそがデフレマインドなのです。1980年代の日本人なら、「やってやろうじゃん」と思ったはずです。

井上 智洋 駒澤大学経済学部准教授

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いのうえ ともひろ / Tomohiro Inoue

駒澤大学経済学部准教授、早稲田大学非常勤講師、慶應義塾大学SFC研究所上席研究員、総務省AIネットワーク化検討会議構成員。博士(経済学)。慶應義塾大学環境情報学部卒業。2011年に早稲田大学大学院経済学研究科で博士号を取得。早稲田大学政治経済学部助教、駒澤大学経済学部講師を経て、2017年より同大学准教授。専門はマクロ経済学。最近は人工知能が経済に与える影響について論じることが多い。AI社会論研究会共同発起人。著書に『新しいJavaの教科書』『人工知能と経済の未来』『ヘリコプターマネー』などがある。

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