「AI先進国」になれるチャンスが日本にも到来 本郷バレーがシリコンバレーを超える可能性
政府は2000億円くらいの予算を出すべき
私は、AIの研究開発を劇的に進めるために、政府が年間2000億円ほどの予算を組んでもいいのではないかと考えています。2023年度のAI関連予算が1000億円ほどで、2024年度の概算要求が1600億円ほどなので、2000億円というのはそれほど無茶な額ではありません。それでも今よりも多くの予算があれば、開発環境の整備に充てられるだけでなく、世界各国から優秀な研究者を引き抜くことができます。
極端な話、世界中から根こそぎ優秀な研究者を引き抜くことができれば日本の圧勝です。もちろん、そこまで横暴なことをすべきだとは思いませんが、先端的な研究ができるレベルには持っていく必要があります。国内の優れた研究者を登用するのはもちろんですが、日本だけにとらわれる必要はありません。
中国がどうしてこれだけの科学技術大国にのし上がったのかを見ていくと、1つには世界中から研究者を引き抜いてきたからです。これは、「千人計画」あるいは「万人計画」と呼ばれていて、当初はアメリカなどに留学した学生を中国に引き戻すための政策でした。
しかしそのうちに、中国人でなくてもいいということになり、ほかの国からどんどん研究者の引き抜きを始めたのです。
じつは、最初にそのような政策を採用した国はシンガポールです。私は中国を「大きなシンガポール」と呼んでいます。シンガポールは国が小さいので、ベンチャー企業的な発想で優秀な人材を世界中から集めて成功し、瞬く間に日本の1人当たりGDPを追い抜きました。それを中国のような大国が真似て成功するのかという話なのですが、これが成功してしまったのです。
たとえば今、大学の世界ランキングで、北京にある清華大学は16位、北京大学は17位で、香港大学は31位です。日本のトップである東京大学は、そういった大学に抜かれて39位まで落ちています。特に清華大学の研究レベルは、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)を超えていると言われています。
日本もある程度は中国を見習って、ほかの国と摩擦を起こさない程度に世界中からAI人材を呼び込むべきだと思います。日本から中国への人材流出は深刻な問題でしたが、これまでさして意識されることがなく、ほとんどなんの手も打たれませんでした。
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