高性能で格安、中国AI「ディープシーク」の潜在力 業界の勢力図に大きな変化をもたらす存在になるか

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ディープシークの波紋は続くのか(写真: Leon Neal/Getty Images)
創業からわずか1年あまりの中国AI企業「DeepSeek(ディープシーク)」が発表した生成AIの最新モデルが世界中の注目を集めている。巨額の開発競争が繰り広げられる中、格安のコストで高い性能を実現したからだ。
中国企業の台頭でアメリカの一強体制が崩れ去り、AI業界の勢力図を大きく塗り替えることになるのか。KDDI総合研究所の小林雅一リサーチフェローに“新参者”の実力を聞いた。

オープンソースで開発した狙い

ーーディープシークの生成AIは強力かつ格安と言われています。なぜ、こうした開発ができたのでしょうか。

いちばん注目されてるのが知識蒸留と呼ばれる手法です。(生成AIが利用する)大規模言語モデルを”主役”だとすると、より小さくてコンパクトな言語モデルを開発するやり方。これまで、ネット上から膨大なデータを集めて、それを大量のGPUを使って学習するのが正攻法でした。しかし、蒸留を使えばそうした面倒な手間が省けて、低コストかつ短時間でそのAIは大規模言語モデルの知識を受け継ぐことができるわけです。

ーーもう1つの特徴は、ディープシークがオープンソースで開発されたことです。この狙いについてどう見ていますか。

オープンソース化すれば、どんな技術者でも、どんな会社でも使えるようになる。そうすると、自分たちの勢力範囲を拡大することに役立つわけです。スマホの世界ではアップルのiOSとグーグルのAndroidがある。オープンソースのAndroidは誰もが使えるから韓国や中国の企業もスマホに使う。結果的にスマホのOSとしてどちらがデファクトスタンダードになったかといえばAndroidでしょう。

おそらく同じことをディープシークも考えていて、オープンソースにすることで世界中の会社や技術者が使ってくれるかもしれない。そうなると生成AIの中で先を行くオープンAIの市場拡大に”ストップ”をかけることができるじゃないですか。

ーー中国企業が新たな展開を見せているわけですが、AI開発を行うライバルの動きはどうですか。

今回、ディープシークは巨額の資金を使わなくても高性能の生成AIを開発できると世界に示したわけです。だからアメリカ企業も開発姿勢を改めるのかなと思ったのですが、まったくそんなことはなかった。メタのCEOは今後ともAIのインフラ整備に巨額の資金を投じると言っている。マイクロソフトもそうです。

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