CEOがイケメンだと会社の業績がよくなる? 労働経済学の権威が教える美の経済学

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第1位を除くと、上位に入ったCEOの率いる会社は、コンテストに加わったほとんどのCEOの会社より規模が大きい傾向が見られた。これが科学的な調査だなんてとても言えないが、それでも、企業の成功とCEOの容姿には正の相関があるとにおわせている。

単純に、順番に並べてみたらそうなったというだけかもしれない。もう大成功している会社の取締役会なら、会社の顔はきれいであってほしいと願い、そのためならおカネだってつぎ込むかもしれない。でも同時に、これは因果関係なのかもしれない。美しいCEOは自分の率いる会社の売り上げを増やせるのかもしれない。

心理学者2人が大勢の学部生を相手に実験を行った。フォーチュン500から、上位25社と476位から500位の会社を選び、それぞれのCEOの写真を学生たちに見せた。学生たちはCEOの顔立ちを、全体的な魅力も含め、いろいろな観点で評価する。

自分の顔立ちが持つ力を、CEOがより発揮できるのは大企業だ。いちばん大きな会社といちばん小さな会社を比べると、CEOの魅力は統計的に有意なほどの違いはなかった。でも、大企業のCEOのほうが容姿の評価が高い傾向があった。

この証拠はスイスでの調査で得られた事例による証拠を支持しているが、証拠としてはとても弱い。どうしてもっと強力な証拠が出てこないのだろう?

相関関係はあっても因果関係は謎のまま

第1に、何をもって人は美しいとするかに関して、大方の合意はあるものの、完全に誰もが同じ意見だというわけではない。学部生のグループが考える美しさと、典型的なフォーチュン500企業の顧客が考える美しさは、似通っているはずだなんてとても言えない。そして会社の取締役会が選ぶCEOを左右するのは顧客の好みのほうだろう。

第2は、スイスの美形コンテストと同じ問題だ。この手の調査は因果関係については何も語ってくれない。容姿と企業規模に強い正の関係が見られたとして、言えることはといえば「因果関係があるのかもしれない」、思い切ってもそれぐらいだ。単に、見栄えのいい重役は大企業に雇われがちだというだけかもしれないし。

CEOの容姿が企業の利益を増やしている、どれだけそう断定したかろうとも、証拠はそうにおわせるにとどまる。

ダニエル・S・ハマーメッシュ 労働経済学者

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Daniel S. Hamermesh

テキサス大学オースティン校で経済の基礎に関するスー・キリアム寄付講座の担当教授、オランダのマーストリヒト大学では労働経済学の担当教授を務める。著書に『労働需要(Labor Demand)』、『どこでも経済学(Economics Is Everywhere)』などがある。

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