岸田文雄は、世にも不思議な首相である。
並の政権ならとっくに総辞職を決断してもおかしくないほどのレベルに支持率が低下しても泰然自若として、新しい年を迎えようとしているのだ。
2023年12月に実施された報道各社の世論調査では、内閣支持率は軒並み20%台に落ち込み、毎日新聞と時事通信の調査では、「レッドゾーン」と呼ばれている10%台にまで急落した。
時事通信の世論調査は調査員が直接面談してサンプルを採る昔ながらの方式を続けているため、電話調査に切り替えた他社より信憑性が高い。しかも10%台まで落ちた内閣支持率がⅤ字回復した例は一つもない。
過去半世紀、支持率が10%台に落ち込んだのは、竹下登、森喜朗、麻生太郎の3内閣などごくわずかで、いずれも10%台に落ちてから間もなく総辞職(麻生内閣は総選挙に敗北して)に追い込まれている。
新型コロナウイルス対策への不満も手伝って支持率が急降下し、菅義偉が自民党総裁選出馬を断念した直後の内閣支持率(2021年9月)は33.4%もあったのである。
「岸田はもう死んでいる」
北斗の拳風に書けば、「お前(岸田)はもう死んでいる」状態なのだが、本人にはその自覚が一向にない。
なぜなら首相は、伝家の宝刀であるはずの「衆院解散権」を行使しない方針を態度で示しているため、自民党所属の衆院議員に奇妙な安心感を与えているからだ。