「決断しない男」岸田首相は結局解散できない 再び自民党を襲った「リクルート事件」の悪夢

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岸田にとって幸運なことに、2024年の国政選挙で確定しているのは、前衆院議長細田博之死去に伴う4月の衆院島根1区補欠選挙だけ。たとえ、ここで負けても傷は浅い。

しかも政治資金パーティー券事件で立件された議員が3月15日までに辞職しなければ、補選は自民党総裁選後の10月まで先送れる。国政選挙の補欠選挙は原則的に4月と10月に行われる定めだからだ。

岸田サイドが待ち望んでいるのは、6月から実施される所得税減税で、「ここまで持ちこたえられれば潮目は変わる」(宏池会幹部)といたって楽観的だ。

だからこそ、2024年度予算案が衆院を通過した後の3月上旬にアメリカを訪問する外交日程を早々とリークし、少なくとも予算案が成立する3月末まで「解散しない」意思を明確にしている。

解散は「ポスト岸田」に委ねられる

しかし、歴史は繰り返す。「リクルート政局」では、藤波らが立件された後に竹下内閣は総辞職。宇野宗佑に後事を託すが、「三本指スキャンダル」が発覚し、自民党は惨敗。続いて本籍・竹下派の海部俊樹がリリーフに立ってようやく党勢を建て直した。

「リクルート政局」が招いた政治不信のなかでは、当時の実力者・竹下登にも解散は打てなかった(写真:編集部)

今回も政局の引き金を引くのは、国会議員の立件だろう。巷間、1月下旬の通常国会開会前にも立件されるとの見方が流れているが、リクルート事件では、国会開会中の5月に藤波らを在宅起訴している。

国民の政治不信が沸点に至ったときに衆院を解散する度胸は、政界きっての実力者だった竹下にもなかった。好機を逸した岸田ならなおさら。衆院解散は、「ポスト岸田」の手に委ねられるはずだ。その時期はズバリ、自民党総裁選直後の2024年秋となろう。

もちろん、岸田政権が夏まで持たず、総裁選が大幅に前倒しされることも十分あり得るが。                   (敬称略)
 

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