夏の酷暑にまだまだ終わりの見えない8月下旬。岸田内閣の支持率も、5月のG7広島サミット後を頂点にジリジリと下落が続いていた。6月の衆議院解散を見送った岸田文雄首相が、次のタイミングとして検討していたのが秋解散だが、「現状では難しいのではないか」。こう問いかける私に、ある自民党幹部が声を潜めてこう語った
「支持率が多少下がっても、解散は早くしたほうがいいんだ。時間が経つと特捜部の動きが本格化する」
そのとき私は、東京地検特捜部が政治の何をターゲットに動いているのかピンと来なかった。風力発電をめぐる秋本真利前議員の事件が広がりを見せるのか、それとも別の疑惑が新たに進行しているのか。その後取材を進めていくと、特捜部が自民党の派閥パーティーの問題を探っていることがわかってきた。ただどこまで大きな問題になるのか、私はまだそこまでの危機感を持てずにいた。
危機感がなかった岸田首相
そして危機感を持たなかった人がもう1人。岸田首相だ。
自民党幹部は「官邸に問い合わせてもまったく検察の動きを把握していない」と嘆いていた。話をしても、単なる過少記載で、会計責任者のミスで済まされるのではという楽観論が支配し、危機感を共有できなかったという。不祥事が続発した政務三役の人事でもわかるように、岸田官邸の情報収集能力は極めて低い。
9月に入ると岸田首相は、解散への環境作りのためのカードを次々と切っていく。女性閣僚を5人も登用した内閣改造、旧統一教会への解散命令請求、そして巨額の経済対策。しかしどれも国民の関心を呼ばず支持率は低迷が続いた。
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