首相経験者による現首相に対する事実上の退陣要求は実に41年ぶりだ。菅氏を決起させたのは何か。
菅義偉前首相が岸田文雄首相にきつい一発を浴びせた。首相は通常国会が事実上終わった6月21日、記者会見で「引き続き道半ばの課題に」と表明した。9月予定の自民党総裁選挙への出馬の意欲を示したと受け取られた。
それを見た菅氏が6月23日配信の「文藝春秋電子版」で「首相自身が責任を取っていない」「総裁選で刷新感を」と述べる。「事実上の退陣要求」(朝日新聞・同月24日付朝刊)と報じられた。
3カ月前の3月14日、菅氏をインタビューした。そのときは「自民党は厳しい状態にある。派閥解消が改革のスタートライン。私も力を尽くしたい」(「東洋経済オンライン」4月5日公開)と語ったが、岸田首相への評価や政権運営に関する質問には「無回答」を条件に取材に応じるという慎重な対応だった。その後、国会閉会まで情勢を見極め、そのうえで「岸田首相批判」の封印を解く、と決意を固めたのだろう。
岸田首相は「派閥とカネ」問題が噴き出した2023年10月下旬以降、兼務していた岸田派(宏池会)会長辞任、岸田派解散宣言、関係議員の大量処分、各派の解散要求、政治資金規正法の改正などに取り組んできた。首相にすれば、自民党の構造を根こそぎ変革する大改革を懸命に推し進めているのに、なぜ前首相から強烈な批判を浴びるのか、と不満が渦巻いているに違いない。
一方、菅氏には政権獲得前からずっと無派閥を通してきた「自民党史上、唯一の無派閥首相」という自負がある。「派閥とカネ」で支持率どん底の首相を見て、ここは「無派閥首相」の出番と受け止め、決起したと思われる。何よりも「総理自身が派閥の問題を抱えているのに、責任を取っていない」という点を問題にした。
過去2回の総裁選で「因縁」
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