「発達障害の子」がもっとイキイキとする接し方 当事者の子どもたちの視点を追体験してみる

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ADHDの子どもが成人になり、社会生活を送る上で少し心配な点として、「見ず知らずの他人に対して自分が思ったことを口にしてしまう」という行動があります。

さらに、ASDの方々にも共通する、他人に対して規律正しい言動を求める特徴も見られます。

たとえば、喫煙が禁止されている路上で喫煙者を見かけて、衝動的に大きな声で「そこで吸っちゃダメでしょ! わかってる?」などと注意してしまうような行為です。

ルールを守らない人が当然悪いわけですが、きつい言い方をしたことで相手と揉めてしまうケースもあります。

見ず知らずの他人だけでなく、身近な相手に対しても思ったことを口にしてしまい、それが元でトラブルになり悩む人も多いようです。

社会人になり、入社した会社の上司や先輩に対して、「課長、そのアイデアは絶対うまくいかないですよね?」「先輩、今失敗しましたよね?」といったように、目の前で起こったこと、頭の中にふと浮かんだことをそのまま口にしてしまいます。

その結果、「それ、思っても口にすることじゃないだろ!」「みんなの前で言うことじゃないだろ!」と叱責されてしまうのです。

このような特性をふまえると、社会に出る前にソーシャルスキル(社会生活を送るための技能)を身につけておいた方がいいことは言うまでもありません。

ソーシャルスキルは、多くの子どもたちは幼児期から人とのつきあいで自然と身につけていきますが、良くも悪くも「空気を読もうとしない」ADHDのお子さんは、その基本スキルを身につけていないことがまれではありません。

特別支援学級などにおけるトレーニングでは、専門家が相手の意図や気持ちを理解することの重要性、感情や行動をコントロールする力の磨き方などを教えてくれます。

さらに、人の話を聞くとき、目上の人に挨拶するとき、会話の輪に加わるときなど、さまざまな日常生活の場面を設定し、専門家がお手本を見せてくれたり、本人がロールプレイングで演じてみたりしながら、「こんな場面ではこう行動すればいいんだ!」ということが体感的に理解できるようになっていくのです。

「過剰集中・一点突破」をプラスの個性と見なす

ADHDのお子さんの場合、「好きなものにはとことんのめり込む」という特性があります。没頭の度合いは、定型発達者のレベルを凌駕しています。

その「過剰集中・一点突破」を素晴らしい個性と見なし、本人が打ち込める対象を見つけてあげることが大切だと思います。

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芸術の分野などは、没頭できるよい対象です。中でも絵画やイラスト、漫画などは、ADHDの人たちと相性が良いようで、寝食を忘れて描き続けている人が多くいます。

彼らはいろいろなことを想像して新しい試みを考えるのも得意で、起業家にはADHDの特性を持つ人が数多く存在しています。

また、スポーツもおすすめです。

サッカー、ラグビー、バレーボール、陸上競技など、激しい動きを伴うコンタクト競技(相手選手に直接接触する形式の競技)、スタミナの求められる競技で活躍する人が多いです。

「これは苦手」「あれはできない」ということも多いADHDのお子さんに、チャレンジする機会を作ってあげて、「これだ!」という出合いをサポートしてあげてください。

岩波 明 精神科医
いわなみ あきら / Akira Iwanami

1959年、横浜市生まれ。東京大学医学部医学科卒。医学博士、精神保健指定医。東大病院精神科、東京都立松沢病院などで診療にあたる。東京大学医学部精神医学講座助教授、埼玉医科大学精神医学講座准教授などを経て、2012年より昭和大学医学部精神医学講座主任教授。精神疾患の認知機能、司法精神医療、発達障害の臨床研究などを主な研究テーマとしている。著書に『狂気という隣人』『うつ病』『文豪はみんな、うつ』『生の暴発、死の誘発』『精神科医が狂気をつくる』『心の病が職場を潰す』ほか多数。

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