「発達障害の子」がもっとイキイキとする接し方 当事者の子どもたちの視点を追体験してみる
衝動的な暴力は、ASDでは必ずしも頻度は多いとは言えません。しかし、ぎりぎりまで追い詰められた場合やパニックになった際には、器物損壊や対人的な暴力が起こることもあるので、注意が必要です。
また、ASDの方々には、自分の好きなもの、興味のあるものに対してのめり込むという傾向が見られます。
とにかく漢字が好きな人、石を集めるのに熱中する人、女性アイドルの記事収集が好きな人など、興味・関心の対象はさまざまです。鉄道や乗り物、ゲームに対するマニアも大勢います。
同様にADHDの人にも、好きなもの、興味のあるものに対してのめり込むという傾向があります。
あくまでも印象になりますが、ADHDの人が「熱く激しくのめり込む」(色に喩えると赤の情熱)のに対して、ASDの人は「深く静かにのめり込む」(色に喩えると青の情熱)という違いはあると思います。またADHDの場合、のめり込みやすいが飽きやすいという点が特徴的です。
有効な「伝え方の工夫」
ASDの人とコミュニケーションをとる際に有効なのが、伝え方の工夫です。
1つめは、迷わない伝え方。
「○○をしましょう」といった形で、具体的かつシンプルに言い切って伝えます。曖昧な伝え方は、迷わすだけに終わります。
数字で具体的に伝えるのも良いですし、実際にやって見せたり、動画で説明したりするのもおすすめです。ASDの人が、迷う余地のないコミュニケーションをとるのです。
また、多くのことを伝えようとしないことです。混乱しないように、指示は1つずつ与えるようにしましょう。
2つめは、興味・関心の持てる伝え方。
ASDにおいては、自分の興味・関心があることにのめり込む一方で、それ以外のことには関わらない傾向があります。
たとえば、その人が電車を好きなのだとすれば、電車のイラストなどを資料にあしらったり、電車に喩えて説明したりすることで、コミュニケーションがスムーズになるでしょう。
3つめは、肯定的な伝え方。
残念なことですが、ASDの人が社会に出るまでに、学校生活において自らを否定的に捉えてしまうような出来事を数多く体験している例をしばしば見かけます。
「なんでそんなこともできないの?」「人と一緒の行動が苦手なの?」といった心ない言葉がけ、あるいはクラスメイトからのいじめなどです。
そのような体験を持つ人たちに対して、「ダメ」とか「そうじゃない」といったダメ出しベースの教え方・伝え方ではうまくいきません。
具体的に伝えた上でやってもらい、できているところをまず承認する。
その上で、できないところを改善していくという、「前向きな評価」をベースにしたコミュニケーションが必要です。