おならや便の悪臭、膨満感は「膵臓の危険サイン」 糖尿病の原因に、膵臓がんリスクは約12倍も

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「腸内細菌の多様性が失われたり、悪臭物質が増えることもわかっています。腹部にガスが溜まるとお腹が張り、おならが出やすくなり、おならや便のにおいが強くなります。食事をするとすぐにトイレに行きたくなるなどの症状も出やすいです」(正宗さん)

脂っこい食事の後には「脂肪便」といって、光沢のある油まじりの便が出ることも。これによって脂溶性ビタミンの不足、低栄養の問題が起こってくるという。

脂溶性ビタミンの不足では、例えばビタミンAの不足では、夜盲症になったり、皮膚や粘膜の乾燥が起こったりする。ビタミンDが不足すると、カルシウムの吸収率が低下し、骨粗鬆症のリスクが高まる。ビタミンEが不足すると、神経や筋肉に障害が起こることもある。

低栄養でやせてしまえば、さまざまな病気にかかるリスクが上がる。

また、膵臓はインスリンなどのホルモンを分泌する臓器でもある。膵臓が機能しなくなるとインスリンの分泌も失われるため、糖尿病を発症することもある。

何より慢性膵炎は膵臓がんのリスクになる。日本での多施設による研究では、一般人口に比べて慢性膵炎の患者は膵臓がんになるリスクが11.9倍と高かった。

早期診断・早期治療が重要

最近では「早期慢性膵炎」といって、腹痛や背部痛、腹部膨満感などの症状がある患者のなかに、早期の慢性膵炎が隠れているという考え方も出てきている。

進行した慢性膵炎になるのを防ぎ、膵臓の機能を維持するためには、早期診断・早期治療が重要になるためだ。

実際には、問診で自覚症状や飲酒歴、喫煙歴、膵炎の家族歴や急性膵炎の既往の有無などを聞き、血液検査や画像検査などを総合的に見て、慢性膵炎と診断する。

治療は病期によって大きく異なる。

「初期である代償期は痛みが強いため、急性膵炎と同じように炎症を抑えるためのタンパク分解酵素阻害薬や、鎮痛薬などによる薬物療法を行います。痛みがある時期は、膵臓を刺激しないよう脂肪を含む食事は控えます。断酒や禁煙は、症状の緩和、進行の抑制のために効果的で、このほかにもさまざまな生活指導を行います」(正宗さん)

飲酒や喫煙以外には、トウガラシなどの刺激物や、ストレスや過労も大敵だ。そのほか偏食せずバランスのよい食事を摂ること、規則正しい生活習慣が大切だという。

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