長崎「正覚寺下」行き路面電車、ブラジルを走る意外 64年間、市民と共に走った電車の「第二の人生」

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実はこれ、長崎県長崎市の路面電車として、2014年まで使われていたもの。

自動車や電車が海外で「第二の人生」を送ることはよくある話だが、路面電車のケースは珍しい。またブラジルといえば地球の反対側。その1台の数奇な人生を、世界100カ国以上の現地在住日本人ライターの集まり「海外書き人クラブ」の会員が追った。

「動く博物館」に加わった長崎の車両

サントスではかつて路面電車が普通路線として運行していた時代があり、その歴史は1909年からと古い。長らく市民の足として活躍していたが、モータリゼーションの到来により、1971年に全線廃止。もはや線路と路面電車の大方は過去のものとなっている。

しかし、中心街にわずかに残された線路を観光資源として活かそうと、市の観光局が2000年に観光路面電車として再開したのだった。

かつて長距離列車のターミナルとして使われていたバロンゴ駅から出発する206号(写真:筆者撮影)

当然ながら、当時の車両はすぐに使える状態ではなかった。

では、どうするか? 新型車両を導入するか? ここで一計を案じたのが観光局の人たち。「最新型の車両なら世界中どこにでもある。どうせだったら世界中から古い路面電車を集めたほうが、観光客にも喜んでもらえるんじゃないか?」。そう、「逆転の発想」だ。

こうして「動く博物館」をうたい文句に、今ではタイプの異なる13台の路面電車を収蔵し、そのうちいくつかを運行している。

海を渡ってポルトガルやイタリアからやってきたものもある。

車両番号40の路面電車は、動力部とシャーシがスコットランド製で、車体がブラジル製。1950年代に製造され、1970年代までこのサントスで運行されていた。サントスの「古きよき時代」を知るこの車両の内装は、当時の広告のレプリカで飾られている。

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