長崎「正覚寺下」行き路面電車、ブラジルを走る意外 64年間、市民と共に走った電車の「第二の人生」

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路面電車を含む鉄道の国際的な標準軌(レール間の隔の基準)が1435mmなのに対して、サントスの軌間(レール間の幅)は世界で唯一1350mm。そのため元長崎電気軌道の車両も軌間が変更された。

「軌間変更そのものは難しくないのですが、モーターとかみ合わせる歯車の位置とブレーキのシステムも変更する必要があました。それができない車両はサントスを走れません」

また206号は長崎ではパンタグラフで電気を取り入れていたが、当地では他の車両と同様のトロリーポールに取り替えられた。

パンタグラフからトロリーポールに変更された送電装置(写真:筆者撮影)

専門家として車両の技術面に感じた興味は少なくなかったが、何よりも歴史的な背景に感銘を受けたそう。

「原爆投下は悲しい歴史でした。戦後に長崎を走った車両が、ここにあることに特別な意味があります」と、ナシメント氏は長崎の車両に気持ちを寄せた。

昭和の雰囲気がたっぷりの車内

CETサントスの車庫で停車中の車両に立ち入ると、ブラジルにありながらも車内はまるで長崎の日常をとどめたタイムカプセルのようだった。

ブラジルの地下鉄と比べて低い位置にぶら下がるつり革。停車ボタン下の「お降りの方はこのボタンを押してください」の日本語表記。「大人120円、小児60円」と書かれた長崎電気軌道の電車路線案内図。日本を離れて久しい筆者には、ノルタルジーがこみ上げてきた。

原爆投下によって長崎電気軌道が受けた被害を紹介(写真:筆者撮影)
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