日銀の金融政策に対する見方や、植田総裁の評価などエコノミストが回答。
2023年4月、黒田東彦氏が退任して10年ぶりとなる新総裁に植田和男氏が就任した。初の学者出身の総裁だ。
足元では輸入物価の高騰によるインフレが進むほか、賃上げ機運も広がる。日銀がかねて発信してきた「賃金上昇を伴う形で2%の物価目標が持続的、安定的に実現する見通し」が立てば、黒田前総裁時代から続く大規模な金融緩和政策の枠組みを本格的に転換することになる。
いま行われている緩和政策としては、マイナス金利やイールドカーブコントロール(YCC)政策、ETF購入など多岐にわたる。
植田総裁が直面するのは、そうした複雑に構築されてきたこれまでの政策を混乱なく転換していけるかだ。すでに植田総裁はYCCの金利上限を徐々に引き上げ、段階的に形骸化させてきた。マイナス金利の解除も視野に入りつつあり、その時期に注目が集まる。
春闘の結果を踏まえて解除
マイナス金利の解除時期についてエコノミストの予測を見ると、12人が2024年4月とした。
「春闘で高い賃上げ率が達成されれば」(小林真一郎・三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、「春闘における賃上げの手応えが十分であることを確認した上で」(上野泰也・みずほ証券チーフマーケットエコノミスト)、「春闘の序盤の結果まで見極めたうえで」(小玉祐一・明治安田総合研究所フェローチーフエコノミスト)など、3月から本格化する春闘の結果を受けて、「物価目標の持続的・安定的な達成の実現可能性が高まったとして、日銀は金融政策の正常化に踏み切る」(斎藤太郎・ニッセイ基礎研究所経済調査部長)との見立てだ。
ただ、日銀が「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現にこだわる背景には、2013年1月に政府と交わした共同声明がある。
楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストは、「日銀が正常化に踏み切るには、少なくとも政府が、日本経済がもうデフレでなくなったと認定することが必要」と指摘する。
さらに、「その判断条件として、①CPI、②GDPデフレーター、③GDPギャップ、④ULC(単位労働費用)のいずれもが安定的にプラスにならなければならない」。「③が確実にプラスになったか確認するには少なくとも2024年5月に発表される1~3月期のGDPギャップまで待つ必要がある」ことから、正常化に踏み切るのは「政府が脱デフレ脱却を判断したあとの6月と想定」している。
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