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サプライズなき日銀の大転換、異次元から普通へ 最大の難関を就任1年弱で突破した植田総裁

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「ちょっとだけ」金利のある世界が到来した。マイナスから0~0.1%へ。とはいえ、日銀がどんどん利上げするかといえば、円安抑制でファイティングポーズをとりつつ先送りする見込みだ。脱・異次元後も緩和は続く。

植田和男日銀総裁
就任から1年足らずで引き継いだ難題をクリア(編集部撮影)

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ついに11年に及ぶ「異次元緩和」が幕を閉じた。「短期金利を操作する普通の金融調節になっていく」。日本銀行の植田和男総裁は今後の金融政策についてそう語った。

日本銀行は3月19日の金融政策決定会合でこれまでの大規模緩和を事実上終了させる決定をくだした。マイナス金利政策や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)、ETF(上場投資信託)などリスク資産の買い入れを終了する。物価2%を安定的に超えるまでマネタリーベースの拡大方針を続けるとした「オーバーシュート型コミットメント」も廃止する。

「主な政策手段」と位置づけた短期金利は、金融機関の間でやりとりする際の無担保コール翌日物レートを対象に0~0.1%に誘導する。

脱・異次元は黒田東彦前総裁を引き継いだ新総裁に課せられた難題だったが、植田総裁は1年弱でスムーズに転換点を迎えることに成功した。

「ほかの中央銀行と同じ」に

「金融政策の正常化といえるか」。会合後の会見では今回の決定に対してこのような質問も出たが、「正常化に込める意味は人によって違う、さまざまな手段をやめたことにつきる」(植田総裁)と答えるにとどめた。

短期の政策金利引き上げは2007年2月以来で17年ぶりだ。2016年2月にマイナス金利が導入されてから、8年ぶりに「ちょっとだけ」金利がある社会に戻ることになる。

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