3月に日本銀行は政策転換し、異次元金融緩和を脱した。異次元緩和を批判してきたマクロ経済学者の吉川洋氏はどう受け止めたか。

吉川 洋(よしかわ・ひろし)/東京大学名誉教授、日本銀行参与。1951年生まれ。米イェール大学博士。専門はマクロ経済学。東京大学教授、立正大学学長などを歴任。著書に『デフレーション』(2013年)(撮影:尾形文繁)
──物価と賃金の関係が注目され始めたのは数年前ですが、異次元緩和以前に、賃金下落が日本のデフレの要因と指摘しました。この時点での政策変更をどうみますか。
当然のアクションだった。むしろ遅きに失した。
1年前の春闘でも、そこそこの賃上げ率が出ていたが、これでは十分ではないと政策転換を先送りした。金融政策は機動性が命で、そこが国会審議を要する財政政策との違いだが、物価上昇率が2%を超え続けている状態で1年先の春闘にげたを預けるのは普通ではない。
賃金の動向はどの中央銀行も見ているし、見るべきものだ。だが今回、日銀は最も重要な決定の判断材料を連合の春闘に丸投げした形だ。
物価を決めるのは「期待」?
──物価と賃金が上昇する状態になった要因をどう考えますか。
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