
植田総裁体制に国内外で強い追い風が吹き始めた(撮影:今井康一)
黒田東彦の異次元緩和ほど、難解な政策スキームもない。長期国債の大量購入に始まり、その限界が見えるとマイナス金利を追加し、これも不評と知るや、今度は長短金利を同時に操作する「イールドカーブ・コントロール(YCC)」の荒技をひねり出した。さらにこれにも修正を重ねた結果、まるで迷路のような複雑怪奇な政策体系になってしまった。
市場を混乱させずに正常化するには段階的に解除していくしか道はない、と日銀スタッフは考えていた。植田和男体制の下でYCCを2回修正した時点でも、次はYCCの完全撤廃、その後にマイナス金利を解除し、それからバランスシートの圧縮に取り組む「長い旅」になると当初は覚悟していた。
長い旅になるはずが国内外で「順風」続く
環境が一変したのは、2023年10月のYCC修正の直後である。11月に入り、米国の長期金利が急激に下がり始めたのだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めがピークアウトしたとの見方が市場で広がったためで、一時4.9%あった米長期金利は、年末には3.7%まで低下し、これに引っ張られるように日本の金利上昇圧力も減衰した。
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