「あるときフレンチの有名なシェフと出会い、美味しいラーメンを作ってるんだからもっとアピールしていかないとダメだと言われたんです。『俺のラーメンがNo.1だと言い続ければいつかそうなる日が来る』と言われ、考えが変わっていったんですよね」(甲斐さん)
確かに自分のラーメンの作り方を客観的に見ると、簡単に教えられるものではない。20年以上作ってきたからこそ築き上げられた技術なのだ。
この技術は他のラーメンにないものだし、もっと誇ったほうがいい……。甲斐さんは、自分のラーメンを690円で提供するのでは価値に見合っていないと気付いたのだという。
そこで2022年6月のお店の5周年のタイミングで、博多ラーメンを850円に値上げした。
初めは高いと言われることもあったが、物価高騰の中、都内では850円の博多ラーメンは当たり前のものになっていった。
このラーメンは自分しか作れる人がいないという誇りを持ちながら、昨今のラーメンの「1000円の壁」問題の話題を見るたび、まだこのままではダメだという思いが続いていた。
インボイス制度がラーメン店の経営に影響する理由
そこでさらに甲斐さんの気持ちを変えたのが、今年10月に施行されたインボイス制度だ。
世の中が「税込み」「税別」の金額を強く意識する考え方に切り替わっていくこのタイミングで、甲斐さんは税抜きで「1000円の壁」を超えることが必要だと考えた。
通常のラーメン店で、価格は税込みで表示されていることがほとんどだ。例えばメニューに「ラーメン 850円」と書いてあって、お会計のときに「935円です」と言われたらどう感じるだろうか? こういうときは筆者でも正直一瞬戸惑う。同じく若干違和感を覚える人は多いはずだ。
消費税を払うことは当たり前のはずなのに、なぜかラーメン店だとお客側の消費税の感覚が抜けてしまう。
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