23年「映画興収TOP10」前年超え興収も喜べない訳 アニメの大ヒットが支える興行に潜む危うさ

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『ゴジラ −1.0』の北米配給は、東宝が今年7月に設立したTOHO Globalが手がけている。その第1弾となる本作で大きな結果を出した。国際事業の積極展開を進める東宝の海外配給は、これまでとはまた違った展開になるだろう。

映画界全体が本格的に海外市場を視野に入れて動き出しているこれからは、ヒット指標が従来の国内興収から全世界興収を基準とする時代に向かうかもしれない。『ゴジラ −1.0』はその第一歩となる作品として大きな実績を残した。

ハリウッド大作の不振が続く

洋画は依然として厳しい状況が続いている。TOP10では、昨年の『トップガン マーヴェリック』のスーパーヒットに続くトム・クルーズの『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』(54.3億円)の6位のみ。その次は『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(43.1億円)だが、10位圏外になる。

期待されたディズニーの実写版『リトル・マーメイド』は30億円台。近年のディズニーとしては大ヒットだが、かつてのディズニーとしては物足りない。

ディズニー100周年記念作『ウィッシュ』(日本公開12月15日)が、北米興行でまったく振るわない成績になっていることがニュースになっているが、アメリカ・ディズニーCEOのボブ・アイガー氏はこうした不振を受けて、量から質への制作体制の抜本的な再構築を掲げたことが伝えられている。奇しくも100周年の不振が、近年低迷を続けるディズニーの転換点になるようだ。

大高氏は洋画離れが深刻化する昨今の映画界の現状を「かろうじてあったエンタメ大作の力が落ちている」と指摘する。

大高氏が今年のベスト映画とする、マーティン・スコセッシ監督の『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は、ニューヨーク映画批評家協会賞で作品賞を受賞。スコセッシ監督は『グッドフェローズ』『アイリッシュマン』に続く受賞となり、同賞の80年以上の歴史で、ウィリアム・ワイラー監督とフレッド・ジンネマン監督に続く作品賞を3度受賞した監督となった。

そんな歴史上の2監督と肩を並べたスコセッシ監督の新作でさえ、日本ではまったくヒットしない。

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