23年「映画興収TOP10」前年超え興収も喜べない訳 アニメの大ヒットが支える興行に潜む危うさ

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映画ジャーナリストの大高宏雄氏は「観客はおもしろい映画をしっかり選別しており、関心を引かれないものには動かない。この2本の新作は内容が新鮮であり、ストーリーのおもしろさがある。やはりテレビ局製作映画の底力はあなどれない。ドラマ映画は一時期より淘汰されてきているが、1本当たれば続編につなげていけることが強み。それが何本か続くと軸になっていく。『ミステリと言う勿れ』はそうなりそうだ」と期待をかける。

また、今年の邦画実写シーンにおける「興行的かつ映画的事件だった」と大高氏が語るのが、『福田村事件』(2.5億円)のスマッシュヒットだ。作品は、1923年9月1日に発生した関東大震災の5日後に、千葉県福田村で実際に起こった行商団9人の虐殺事件を描く。

「いまに至る日本人の精神構造にも迫る内容は、生半可な覚悟では作れない。『キャタピラー』など若松孝二監督が目指していた映画作りにつながるものがある」(大高氏)

本作は公開日を9月1日にあわせたことで、時事ニュースをはじめとしたメディアパブリシティが大きく機能し、認知を広げることに成功。年配層を大きく動かした。大高氏は「本作のヒットによって地方のミニシアターは非常に勇気づけられた。ミニシアターの閉館が続くなかで、大きな役割を果たした」と力を込める。

北米では破格ヒットの『ゴジラ −1.0』

邦画実写シーンでもう1つ今年のトピックになるのが『ゴジラ −1.0』だ。劇場上映は続いており、最終興収50億円以上は確実。しかし、『シン・ゴジラ』(82.5億円)には届かなそうだ。

一方、邦画作品として前例のない2000館超えの大規模公開となった北米では、最終興収で2700万ドル以上(40億円以上)を狙える破格のヒットになっている。

すでに邦画実写の歴代全米興収ランキング1位を獲得(2位は1989年『子猫物語』の約1328万ドル)。全世界興収では100億円超えも夢ではないかもしれない。

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