毎年「最低2週間の休暇」フランス人がとれるワケ 会社員はもちろん、農家でも医師でもパン屋でも…!

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髙崎家のある年のバカンス風景より、ブルターニュのビーチで遊ぶ息子さんたち。髙崎さんの著書『休暇のマネジメント~28連休を実現させるための仕組みと働き方(KADOKAWA)』では、さらに多様な職種の「休める仕組みと工夫」が紹介されている。

マンガで紹介した農家専門の労働者派遣団体、調べてみると、日本にもちゃんとありました。酪農専用にはなるのですが、「酪農ヘルパー全国協会」では、冠婚葬祭や怪我や病気はもちろん、旅行や遊びでの利用も大丈夫なのだそう。そのほか、地域単位で相互補助システムを作っているところもあるようです。長期休暇のために利用する人は少ないとは思いますが、日本にもこういう組織があったことに安心しました。今後、さらにこういったシステムが充実していくことを期待します。

日本にとって最もハードルが高い要素は

さて、フランスの「休める働き方」を支える大事な要素「休むことへの強い意志」「計画」「仕組み」「周りの理解」。働き方改革が始まり「休める国」になることを目指す日本にとって、最もハードルが高いのは「周りの理解」かもしれない、と私は思いました。

なにしろ、日本人は便利で迅速で手厚いサービスに慣れすぎています。それが当たり前だと思っている人が多いですし、そのサービスが誰かのオーバーワークの上に成り立っていると想像したことがない人も多いのです。かくいう私も、以前、スペインに住んだことで、やっとそれらは世界的には当たり前じゃないと気づくことができました。サービス提供側も、オーバーワークになっても顧客の希望に応えるのは当然だと思っている人が多いのです。

医療だってそうです。大小さまざまな病院があり、どこの病院でも自由に選べて、人気病院以外ではすぐに診察してもらえて、主治医がしっかり密にフォローしてくれる……そんなの日本人にとっては当たり前ですが、これも実は世界的に見るとかなり恵まれた状況です。「専門医に診てもらえるまで数カ月待ち」なんてことも海外ではザラに聞く話。もちろん、日本だって手続きなどに時間がかかってイライラすることはありますが、その頻度やかかる時間は欧州の比ではないといろんな国の話を聞くたびに思うのです。

ただ、いまの日本の現実……オーバーワークで心身を病む人が多いこと、少子高齢化で今後ますます人手不足になることを考えると、現状どおりの「便利で迅速で手厚いサービスの日本」を今後も維持するのは難しいと思うのです。すでに壊れ始めている、というのが正確かもしれません。

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日本は今後、誰が休んでも仕事をまわせる仕組みを作ると同時に、多少の不便さや他人の休みにも寛容になることが、とても大事になのではないでしょうか。ただ、「労働者のウェルビーイング」と「顧客満足度」、そのベストなバランスはフランスと同じではない気がします。日本にあったバランスの検証はきっとこれから始まるのでしょう。

ちなみに、私の新刊『誰でもみんなうつになる~私のプチうつ脱出ガイド』では、そうやって仕事などで心が落ちてしまったときにどうすればいいかを、3人の精神科医の意見をふんだんに入れて紹介しています。病院へ行くべきかの見極め、精神医療との上手な付き合い方などです。気になる方は、そちらも読んでいただけるとうれしいです。

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ハラユキ イラストレーター、コミックエッセイスト

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はらゆき / Harayuki

雑誌、書籍、広告、Webなどの媒体で執筆しつつ、コミックエッセイの著書も出版。2017年から約2年間バルセロナに住んだことをきっかけに、海外取材もスタートさせる。著書に『女子が踊れば!』 (幻冬舎)、『王子と赤ちゃん』(講談社)、『オラ!スペイン旅ごはん』(イースト・プレス)、この連載を書籍化した『ほしいのはつかれない家族』(講談社)など。この連載のオンライン・コミュニティ「バル・ハラユキ」も主宰し「つかれない家族をつくる方法」を日々探求、発信中。ハラユキさんのHPはこちら

 

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