利用者4.8倍増!笑顔を生む手指消毒器の秘密 つい試したくなる仕掛けはこうして生まれた

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著者は大阪大学一年生向けの全学共通教育科目「学問への扉」で仕掛学を教えており、町中から条件を満たす仕掛けを見つけてきてもらうという課題を課している。講義の最終回には、履修者が集めてきた仕掛けの事例をまとめて「仕掛け100連発」として発表してもらっている。

仕掛けの条件と多少のコツさえつかめれば、誰でも仕掛けを発掘できるのである。

本記事では、3つの事例を通して、実際に仕掛けによって人の行動がどう変わったかを紹介していきたい。

勇気の口

天王寺動物園は大阪市内の憩いのスポットの一つである。近年すっかり雰囲気もよくなって人気の観光地になった新世界も目前にあるので、遊びにくるカップルや家族連れで年中賑わっている。天王寺動物園で動物を見て回って疲れたときは、デッキ下イベント広場がよく利用される。広いスペースで屋根もあるので、イベントのないときは来園者がシートを広げて休憩したりお弁当を食べたりする場所になっている。

そのときに手指消毒をしてもらうための仕掛けとして、ライオンの口型手指消毒器(勇気の口)を当時のゼミ生たちと設置した。このライオンは口が大きく開き、怖い顔をしている。イタリアのローマにある「真実の口」を知っている人にはそれを想起するように作られている。

真実の口には、うそつきの人が手を入れると手が抜けなくなったり切り落とされたりするという都市伝説がある。それを知らなくても、映画『ローマの休日』を観たことのある人なら、新聞記者がアン王女(オードリー・ヘップバーン)を驚かそうと真実の口に手を入れて抜けないふりをするというシーンを思い出すだろう。これらを知っている人は、ライオンの口を見るとつい手を入れてみたくなる。ライオンの口の中にはセンサー式の手指消毒器が仕込んであるので、手にアルコール消毒液がかかり、結果的に手がきれいになる。

真実の口を知らない人はとまどうかもしれないが、勇気の口に手を入れている人を見れば使い方を知ることができる。また、「勇気の口」と書かれた紙も貼っているので、口に手を入れる勇気が試されていることが伝わるようにもなっている。

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