損保ジャパンがビッグモーター問題で犯した「罪」 現役役員からも櫻田氏の引責辞任は必至の声

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背任罪にもつながる法的なリスクを鑑みることもなく、「未来志向」などと言って入庫再開にばかり目を向けようとしたことに、調査委は「それが損保会社のレピュテーションをいかに低下させるおそれのある高リスクの判断であるか、という認識ないし想像力が決定的に乏しかったと言わざるを得ない」と厳しく指摘している。

また、昨年7月14日に損保3社の実務者協議が開かれた際、損保ジャパンの担当者は、改ざんされたヒアリングシートの信憑性を東京海上などから問われると、「本人が署名しているため、信憑性があると判断した」と言い、被害を受けた顧客への説明は「案内はしない。そのための理屈は今後考える」などと豪語している。

入庫再開を決めた役員ミーティングの後に開かれた実務者協議であり、損保ジャパンの担当者が暴走していたわけでは決してない。中村氏らと説明内容を入念に相談したうえでの発言とみられる。

損保ジャパンという会社が、金融機関とは到底思えないような「粗雑な」(調査委)意思決定を繰り返し、被害者や契約者を普段からいかに軽視した運営をしていたのかが、このことからもよくわかる。

白川社長だけでなく、極めて不適切な経営判断を繰り返し、不正請求の隠蔽に加担した役員、社員の責任は重大で、役員であれば引責辞任は必至の情勢だ。

櫻田会長の引責辞任は避けられない

また、損保ジャパンの取締役も務めながら、9月8日の記者会見で自らの責任をはぐらかし続けたSOMPOホールディングスの櫻田会長と、自らの秘書役を務めた白川氏に社長のバトンを渡した損保ジャパンの西澤敬二会長についても、引責辞任は避けられない。

ビッグモーターの不正請求問題について、東京海上や三井住友海上は昨年3月から4月にかけてトップに詳細を報告している。一方で、昨年3月まで社長を務めていた西澤氏には、「一切報告していない」(損保ジャパン幹部)という。

ヒアリングシートの改ざんについても、櫻田氏が知ったのは今年7月の取締役会だといい、櫻田体制においてはバッドニュースがまともに共有されず、企業統治や内部管理の機能不全は火を見るより明らかだ。もし櫻田氏が引責辞任を執拗に避け、CEO職のみを外し会長兼取締役会議長として残るようなことになれば、損保ジャパンの組織は持たないはずだ。

「第二、第三の櫻田、西澤をつくらないよう、持ち株(会社)も(損保)ジャパンも経営陣を刷新する必要がある」。そうした声は今、櫻田氏をよく知るOBや現役の役員からも上がり始めている。

中村 正毅 東洋経済 記者

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なかむら まさき / Masaki Nakamura

これまで雑貨メーカー、ネット通販、ネット広告、自動車部品、地銀、第二地銀、協同組織金融機関、メガバンク、政府系金融機関、財務省、総務省、民生電機、生命保険、損害保険などを取材してきた。趣味はマラソンと読書。

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